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自由気ままな操血女王の転生記  作者: シンG
第四章 操血女王のクラウン生活【コルド地方編】
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04 回れ右をしたい今日この頃

ブクマ、感想ありがとうございます♪(*´ェ`*)

いつもお読みくださり、ありがとうございます~~!

「そういえば、この辺りの麓の街って、どの辺にあるんでしょう?」


「ここが大丘陵のどのあたりかにもよりますが、もう少し高台に行けば近くに国境塔が見えるはずです。そうすれば自ずと、下山する方角も読めることでしょう」


 わたしの疑問にタクロウがすかさず教えてくれた。


 国境塔……おぉ、なんだか懐かしい響きを感じると思えば、転生直後に浚われた時に見た、三角錐の塔のことか。


「そういえば腹ァ減ったなぁ~」


「若いっていいねぇ~……おじさんはここ数日に起こった驚きの連続で逆に食欲がないわ。むしろキリキリする」


 正反対の意味でお腹を押さえるヒヨちゃんとマクラーズ。


 最近マクラーズの空気がやけに薄いと思っていたら、もしかしたら胃痛に苦しんでいたことが原因なのかもしれない。目まぐるしく色々とあったもんね、ここ最近。


「麓の街で食事を摂ると言っても……セラフィエル様の手料理以上の美味しさは期待できなさそうですけど」


「セラフィエル様の料理は絶品ですからね!」


 そんなことをメリアとクルルが言い出し始めるが、実際わたしは大した料理は一切作っていないから、変に持ち上げられても困る……。


 調味料も素材も充実していない――というより、味が薄いヴァルファラン王国において、わたしの育てた野菜の旨味がことさら強く感じるだけであって、特段凝った料理をしているわけではないのだ。


 変にハードルを上げられても困るので訂正しようかとも思ったが、現に王都の食事よりもわたしの簡単な料理の方が美味しいのも事実。話が拗れても面倒なので、結局わたしは言及せずに、ブラウンの手綱を引いた。


「それじゃ、とりあえず森を抜けて山を下りましょうか。丁度いい高台があれば、わたしが登って国境塔との位置を確認しますね。ブラウン、ちょっと道が悪い場所だけどいけそう?」


「ブルルルゥ」


「ふふ、頼りになる返事だね。ありがとう」


 任せろ、と言わんばかりに嘶くブラウンの鬣を指先で梳き、わたしは御者台へと乗り込む。そんなわたしの横に嬉しそうに目を輝かせたガラジャリオス(幼女)が一緒に乗り込む。


「むふー、ウチもセラと一緒に行くのじゃー。美味しいものたくさん食べるのじゃ!」


 尻尾があれば、パタパタと振っているであろう様子に、わたしは思わずくすりと笑ってしまい、そのボサボサの頭を撫でてあげた。くすぐったそうに眼を細める彼女が、50メートル級の巨大蛇龍だと誰が想像するだろうか。アカとは別のタイプの妹ができたような気持ちになり、わたしは甘やかしたい一心で、ガラジャリオスを膝の上で寝かせて撫でまわす。


 撫でるたびにキャッキャと楽しそうに身を捩るガラジャリオス。お持ち帰り決定の瞬間である。


「それではセラフィエル様。陽が傾く前に早速移動を開始しましょう」


「そうですね」


 タクロウの言葉にうなずき、わたしたちは麓の街を目指そうとし――――、



『待て待て待て待て待てェーーーーーッ!』



 という慌てふためいた声が下から聞こえてきた。


「ど、どうしましたか、ドグライオンさん」


『どうしたもこうしたもあるか! なに勝手に帰ろうとしておるのじゃ!』


「別に……帰るわけじゃなくて、暗くなる前に麓の街に行こうかなぁ~って思っただけで……」


 憤慨する土竜から眼を逸らし、わたしは乾いた笑いを貼りつけながら言葉を並べた。


『同じことじゃろうが! レイジェの元に行く話はどうなったのじゃ!?』


「え、えぇ~……? あ、うん、そうだ……明日、また来ますから」


『ワシの目を見て話さんかいッ! 完全に嘘をついている時の挙動じゃろ!』


「ソ、ソンナコトハ……」


 カタコトで返していると、不意に木々の葉がざわめく威圧がわたしたちへと降りかかる。何事かと思って、その出本へと視線を送ると、そこには鋭い目つきをしたバリーベルフォンがいた。


『そうだぞ、貴様ら……何を勝手なことをしている……!』


 ジリ、と殺気立った赤狼せきろうがゆらりと馬車ににじり寄る。


『おぉ、バリー。お主からも何か――』


 強力な仲間を得たドグライオンは、声をやや明るくして戦友バリーの方へと向き直る。


『ガラが行くなら俺も行くに決まってるだろうが! この俺を蚊帳の外に出すなど、許さんぞ!』


 そう言って、わたしたちの隊列にスッと並ぶガラジャリオス大好き狼。その裏切りをポカンと見ていたドグライオンはやがて肩を落とし、プルプルと震えだした。


『お主らァ! ええ加減にせんかい!』


「いやいや、いい加減にするのはドグライオンさんの方ですよ! 何が嬉しくてわたしたちの首を切ろうと爪を研いでる人んとこに行かないといけないんですか!?」


『そういう約束じゃろうが! これ、小娘! お主……あの時の自信に満ち溢れた態度は何処へ行ったんじゃ!? 演技か……演技じゃったのか!?』


「い、いえ……でも依頼の筋書きではこの地に徘徊する『人形』を倒すことが先ですし……」


『んなものは建前の話じゃったろうに! この地で好きに動き回りたいのであれば、どのみちレイジェの目を誤魔化すことはできん! 加えて強硬派の頂点であるあやつを先に抑えておいた方が、話も進めやすいじゃろ!』


 その言葉に「うぐ……」と気まずそうに口を紡ぐ。


 ドグライオンの言うことは正しく、わたしたちがこのノルドラ大丘陵で活動するのであれば、この地に君臨する八王獣――さらには長の座に就くレイジェオンラーバと話をつけるのは優先すべき事項である。


 でもね……でもね?


 そのレイジェオンラーバが強硬派というのは問題だ。


 わたしの中のシナリオでは、まず八王獣の保守派の人とドグライオンたちを仲介に手を取り合い、領土内の「人形」とやらを討伐。その恩から「わたしたちは敵じゃないですよー」とアピールしつつ、強硬派と和解に持って行くつもりだったのだ。


 レイジェオンラーバも同じく保守派だと思ったからこそ最初は乗り気だったものの……強硬派となると、まずはレイジェオンラーバの説得から始めないといけない。


 人間種・精霊種との盟約を破棄して推すべき、と謳う彼らのことだ。一筋縄では話を聞いてくれないだろう。マクラーズじゃないけど、お腹痛くなってきた……。


 というわけで、わたしのお腹の健康状態を保つためにも、一度距離を取って後日秘密裏に「人形」の情報収集から討伐まで行こうかなぁ~なんて温いことを考えたわけだが、当然のごとくドグライオンに止められた……というわけだ。


 くぅ……強硬派の話をしている時、「若いモン」という言葉をドグライオンが連発していたから、てっきり八王獣以外のそこまで力を持たない獣たちの主張かと思っていたけど……まさかトップの蒼竜そうりゅうが彼らの旗印になっているとは想定外だった。


「本当に行かないと……だめ?」


『何を急にしおらしいフリをしおる……まったく』


 しなを作って懇願してみたが、効果は薄かった。まあ10歳の子供の身体では無理もないか。さりげなくメリアが「ぷっ」と笑ったことは、きちんと覚えておこう。


「えっと……レイジェオンラーバさんはその、ちゃんと話を聞いてくれる感じですかね?」


「レイジェは怒りん坊だから、すぐに暴れまわるのじゃ~」


 膝の上でゴロゴロしていたガラジャリオスからそんな欲しくない回答を貰い、わたしは深くため息をついた。


 まぁ……最悪、戦闘になるかも。文献からじゃ、その力量はよくわからないけど……せめてガラジャリオス以上の強さではないことを祈りたい。あのレーザー級の攻撃を連発でもされたら、さすがに今のわたしじゃ耐えきれないからね。


『観念せぃ、どのみち避けられぬ道じゃ』


「うぅ~……ドグライオンさん、全力のフォロー、お願いしますね?」


『ふぉろー? まあ兎にも角にも無差別にあやつが暴れんよう、ワシも取り成すつもりじゃから、その点は安心せい』


 安心……できるだろうか。ちっちゃな土竜の身体をジィッと見たが、全然安心感は得られなかった。


「セラフィエル様、最悪の場合は私がの者の攻撃を受け流します。貴女はその隙に逃げてくだされば……」


「誰かの犠牲の上でこの旅を完遂するつもりはありませんよ、タクロウさん。そういうのはナシでお願いします」


 タクロウが自己犠牲の言葉を口にしたので、それに対してはハッキリと断っておく。


 やがて諦観の息を吐いたわたしは、御者台から降りた。元々本気でドグライオンたちを置いて麓に降りる気はなかったが、かといって強硬派のレイジェオンラーバと対談をすることに前向きな気持ちも湧かない。


 どうしたもんか、と眉間に皺を寄せるも、行く道は一つしかないようだ。


「分かりました……それじゃ行きましょう。…………レイジェオンラーバさんのところに」



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― 新着の感想 ―
[一言] 私もブラウンになりたいぜ( ˘ω˘ ) そして着々と妹ハーレムを築いていくセラちゃん! これはシスプリ待ったなし!w それにしても、セラちゃんのしおらし攻撃を受けても意見を変えないとは……、…
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