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自由気ままな操血女王の転生記  作者: シンG
第三章 操血女王のクラウン生活【旅路編】
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26 クラッツェードの帰宅と今後の予定

ブックマーク、感想、ご評価、色々とありがとうございますっ!( *´艸`)

そして毎度毎度の誤字の数々……報告に感謝しておりますm( _ _ )m


ようやく今までの話の文体(改行・段落)と表現修正(三点リーダー変更)が終わりました( ;´Д`)

70万越えの文字は中々の強敵でした。。。まさか三日以上かかるとは…(汗)

しかし見返すと、読みづらいわ、イマイチなところがあるわ、改行ミスがあるわ、説明不足があるわと……改めて推敲したくなる気持ちが迸りました。どこかキリのいいタイミングで、もしかしたら見直しをするかもしれません。(物語には変更は生じませんのでご安心くださいm( _ _ )m)


とりあえず無駄に繋がっていた文体は、大分整理しましたので、これでスマホの方も少しでも見やすくなれば幸いです(*´▽`*)


拙作を読んでくださる方々、そして応援してださる皆様にいつも感謝です(*''▽'')

「よっと……今、帰ったぞ――ぉ?」


 フルーダ亭の扉を開き、首元に手を当てながらダルそうに戸口を跨いだクラッツェードは、フルーダ亭店内の様子を見て、目を丸くした。


 その気持ちは痛いほど分かる……分かるよ!


「……セラフィエル、こりゃどういう状況で――」


 クラッツェードが片目を引きつりながら指さした先――そこにはモップを手に持ち、店内の床を水拭きしているクルルの姿がいた。


 ちなみにわたしは、この居心地の悪い空間から逃げ出せず、客席で膝を抱えている状態だ。まさに貝。わたしは今……貝になるのだ。

 

 ようやく空が赤くなり始めたころに帰ってきたクラッツェードこと生贄の姿に、わたしは一筋の光明を見出したかのように、パァッと笑顔を向けた。


 逆にクラッツェードは――見てはいけないモノを見るかのように顔を思いっきり顰めた。


 ……本当に失礼だね、この人。


 そんな無言のやり取りなんて眼中にない掃除中のクルルは、玄関口で立ち尽くすクラッツェードを見るや否や、ダァン、とモップの房糸を床に叩きつけた。……いや、掃除道具は大事にしてね? 買うと意外と高いんだから……モップ。


「貴方! セラフィエル様を呼び捨てにするとは何事なの! 何様なの! 何者なの!?」


「は、はぁ?」


「ハッ……! さ、さては――いと清廉麗しき御方を見て、欲情に駆られたかっ!? この下物げぶつめっ! この私が成敗してくれよう!」


 ――な、なに言っちゃってんの、この人!?

 

 色々とツッコミたいことだらけだけど、とりあえず威嚇代わりにモップをぶん回すのは止めて! せっかく掃除していたのに、房糸に絡みついていたゴミがその辺に散っちゃうよ!


「ク、クルルさん……とりあえず、静かにしましょうか……」


「分かりましたっ!」


 分かってない! 全然わたしの言う「静か」を理解してないよ、クルルさん!


「欲情って……んな、寸胴ちんちくりんに発情する奴なんていねーだろ。ったく……何言って――」


「クルルさん、わたしが許可します。その無礼者に天誅を下してください」


「お任せください!」


 二ッと挑戦的な笑みを浮かべ、モップを槍のように構えるクルルに対し、クラッツェードは「おいおいおいおいっ!」と口元を引き攣らせた。


「事実を言われて逆上すんな! あとモップは遊び道具じゃねーぞ! そしてまずは状況を教えろ!」


「事っ――……ふふふふ、クルルさん。あの男は、最近プラムお姉ちゃんとの発育の差に愕然としつつも……必死に気にしてないフリをする……そんな些細な乙女心を抉るような真似を平然とやってのける酷い人なのです。もはや遠慮は要りませんっ! やっちゃってください!」

  

「良く分かりませんが、良く分かりましたっ!」


 従順キャラへとシフトチェンジしたクルルは、わたしの言葉の意味は理解せず、しかしわたしの心は理解してくれたようだ。人はこれを――ノリがいい、と呼ぶ。


「いや、分かってねぇだろ、お前! ……ていうか、その声――お前、あのローブの女かぁ!? っ……、とりあえずモップを降ろせ、モップを!」


 手を伸ばし、クラッツェードに柄を掴まれたモップは、クルルの腕力では動かすことが叶わなかった。


 グググ……と彼女は両手でモップを引っ張るも、クラッツェードの方が力は上で、両者は拮抗した状態になる。モップを境に距離が近くなる二人なわけだが、クルルの顔を正面から直視したクラッツェードは、僅かに耳元を赤くして、そのまま視線を逸らした。


 ……そういえば、この短い時間で既に忘れかけていたけど、クルルは超絶美貌の持ち主であった。なんかね、このテンションのクルルと1分でも一緒にいると、彼女が見る者全てを虜にする美少女ということを忘れちゃうんだよね。なんでだろうね。


「くっ……ま、魔導具さえあればっ――! セラフィエル様! 私の手甲をこちらへ!」


「いやいや、それは危ないから駄目ですよ」


「そ、そんなぁ!?」


 彼女の手甲はわたしの手元――客席テーブルの上にある。ここにある理由は単純で、ただ掃除の邪魔だったから、外していただけである。


 さて、ちょっとクラッツェードの言葉にムッとしてクルルをけしかけちゃったけど、そろそろ冗談の範疇であるうちに止めないといけない。……一応、開店中の料理屋だからね。開店中に掃除できちゃうぐらい……知人以外、誰も来ないけど。


「すみません、クルルさん……今のは人間流のちょっとした遊びなんです。この人はクラッツェードさんって言いまして、この店の主さんで、居候させてもらってる関係から恩人でもあるんです」


「え、えぇっ? に、人間はおかしな遊びを好むのですね……セラフィエル様がそう仰るなら……分かりました」


 素直に矛を収めるクルル。


 口八丁で誤魔化すわたしを呆れたようにクラッツェードが見下ろしてくる。冷ややかな視線に思わず汗を背中に流すわたしだが、やがてクラッツェードは大きくため息をついて「……で?」と事情を伺ってきた。



「ええっとですね、実は――」



そうして、わたしは帰宅早々、状況が飲み込めていないクラッツェードに、今に至るまでの粗筋を伝えるのであった。



*************************************



「なるほどねぇ。かなり斜め上の展開だが、理解はした」


 わたしはクルルに提案した内容をそのままクラッツェードに伝えた。


 ――わたしの提案はこうだ。


 まずコルド地方に向かう。エルヴィたちの依頼を受ける――という点は変わらず、最優先だ。


 コルド地方の村や街に足を運び、月光草の情報を集める。そして月光草の特徴や採取場所を把握した後、速やかに必要な量を手に入れる。言葉にするとそれだけだが、まぁ――そんなに簡単には運ばないだろうとは覚悟している。


 月光草を手に入れた後――ここからが本題だが、クルルの依頼を続けて受けるとなるとその後の行動が課題となる。


 エルヴィの依頼だけだったら言うまでも無くそのまま王都に帰還するけど、その後にクルルの依頼を受けるとなると、コルド地方から王都に帰り、そこから再び北東部――パラフィリエス大森林へと向かうのはあまりにも大変だし、時間のロスも激しい。


 1年の猶予があるとはいえ、その1年とは謎の草が精霊種たちの集落まで侵食してしまう期限であり、のんびりと事を構えていい期間ではない。本気で依頼を受けて、解決に走るなら――可能な限り早く現場を確認する必要があるはずだ。


 そこでわたしはレジストンにお願いして、誰か同行者を募れないかと考えたのだ。


 二台の馬車でコルド地方に向かい、一台は手に入れた月光草を持って王都へ帰還。そしてもう一台――わたしの手繰る馬車は、その足でパラフィリエス大森林に向かう。月光草についてはわたしが必ずしも持って帰らなくてはいけないわけではないし、そこは信頼ある人に任せられれば、後は王都でクラッツェードに薬を調合してもらうだけで済む。


 本当であれば、専門家であるクラッツェードに同行をお願いしたいところだけど、彼にはこのフルーダ亭のこともあるし、何より――エルヴィとケトの母親の容態を診ていてほしい。それは朝、彼に今回の件を相談した時に決めていたことだ。


 月光草を無事採ってきても、その薬を求める肝心の母親が無事でなければ意味がないのだから。


 その提案を聞いたクルルは「セラフィエル様が来ていただけるなら……!」と胸元で手を合わせ、感涙を頬に流した。優先順位は二番手と受け取られても仕方がない話だけど、クルルはわたしがちゃんと依頼を受ける意思を示したことに喜んでくれたようだ。


 ……そこまで期待されたら、わたしも出来る限り、頑張らなきゃ――ね。


 その後、クルルには先にパラフィリエス大森林に戻って、わたしが後でそこに向かう旨を精霊の女王に伝えてほしい旨を言ったのだが――彼女はわたしの旅についてくる、と言い始めた。


 それには色々な理由があり、まず一つ目として、精霊種領に入るには同じ精霊種が同伴していないと、要らぬ攻撃を受けてしまう危険性があるからだ。


 他種族の領地に、他種族が足を踏み入れた時――その領地の種族の采配の元に、その者の処分が下される。


 そのルールに基づくと、一人で足を踏み入れたわたしに対して、精霊種たちが何をするか分からないので、クルルはついてくると言ってくれたのだ。


 そして二つ目として、何よりわたしのクラウンとしての仕事の手伝いをしたい、とのことだった。


 今回の依頼が無理を言っていることは彼女も承知のことだったようで、無理を通したお詫びと、それでも依頼を受けてくれたお礼に、彼女はこの旅路でのサポートを請け負ってくれた。


 天使のような微笑みでそう告げた彼女の姿に、思わずわたしも感動してしまったほどだ。


 その後、徐々にボルテージアップしていった彼女は「命に代えても貴女をお守りいたしますわ!」から「生活の世話から子守唄まで全てお任せください」と続き、最終的には「あぁ……何かしていないと耐えられませんわっ! どうか私に何かお役目をっ!」と言い出すものだから、掃除をしてもらっていたという経緯に至るのであった。


 もう最後の方では、天使だった微笑は記憶の欠片にも残っていなかった。


 残念すぎる……残念すぎるよ、クルルさん! 黙ってさえいれば絶世の美女なのに!



 ――と、そこまでの話が、今クラッツェードに伝えた内容である。



「あの、クラッツェードさん」


「ん、なんだ」


「エルヴィたちのお母さんの容態についてなんですが……どうでしたか?」


 わたしがクラッツェード側の話を聞こうと、身を乗り出すと、クルルが「あまり殿方に近づきすぎてはいけませんわっ」と、わたしの身体を抑えて椅子の背もたれへと押し戻す。……ちょっと過保護すぎませんかねぇ、クルルさん。


 わたしとクルルの一連の行動を眺めながら、クラッツェードは一つ咳払いをし、エルヴィとケトの母親の状態について口を開いた。




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