壱 A.D.1937
遅れてしまい申し訳無い…
1937年。
ドイツは第日本帝国と共に、日本主体で軍内部に秘密裏に研究機関を設立。
"第日本帝国軍医療零号部隊"、と名付けられた研究機関は生物兵器の開発に取り組み、戦争終結時には後は実戦投入のみ、といった状況であった。
そしてこれが幸いだったのかは分からないが、戦争終結時に医療零号部隊について知っている関係者が殆ど亡くなっており、更には組織の隠蔽も容易であった為にアメリカを主としていたが連合軍上層部はGHQの一部職員と協力し零号部隊を隠蔽・保護。
零号部隊は日本創研と名を変え、兵器の研究開発を続行した。
──そして、日本創研では生物兵器の開発・実験が続けられその一部は実戦投入されたという話もある。
そして現在、日本創研は闇組織として主に生物組織を開発、販売を行なっているが…資料などが殆ど存在せず、現在でも壊滅には至っていない。
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"J.B.L.(Japan Biological Laboratory)
Welcome.
Please do User authentication and Pass Code input.
USER.Takashi Suzuki
PASS CODE.×××××××××
Please Enter Key."
薄暗い部屋、その部屋に置かれたパソコンの前には1人の男が座っており…男は、エンターキーを押す。
するとパソコンの画面は暗転し、"Takahashi Suzuki Researcher, I certified. Welcome."と表示され、また画面は切り替わった。
男はそんなモニターに映し出された大量の文字の中から、一つの箇所をクリックする。
"PLAN - PANDORA
Experiment Record"
──パンドラ計画実験記録。
眼鏡を掛けた中年の男は相変わらず顔色一つ変えず、記録の中から"パンドラ計画第被験体記録"と書かれた場所をクリックする。
"Error!
This place is damaged."
そんな文字が表示されると、男はPCの別のソフトウェアを起動する。
──と、その時。
「どうだ、何かあったか? 」
そんな背後からの声に、男は苦笑しながらこう答える。
「…データの半分は欠落していたがね
ま、今は復旧できないか試してるぜ 」
「そうか…っというか、この部屋暗すぎないか? 」
そんな事を言いつつ、入ってきた男は部屋の電気を付ける。
「暗い方が落ち着くんだよ…あコーヒーか、ありがとう 」
そう言ってコーヒーを受け取った中年の着ているベストには、"NIB"という文字が書かれていた。
──────────
日本国、東京都。
官庁が建ち並ぶその一角に、その建物はあった。
"National Investigation Bureau Japan branch(国際捜査局 日本支部)"通称N.I.B.。
──そう呼ばれるその施設を運用する組織は、国際捜査局。
国連によって設立された国際組織の一つであり、その目的は密輸などの国際犯罪を如何なる介入も無しに捜査する為の組織だ。
──数年前に設立されたこの組織も、日本創研解体を目標とし動いていた。
…そしてそんな組織の施設の一角で、2人は話していた。
「ま…調べた結果、パンドラ計画に関する資料は半分ごっそり無くなってる
まぁ、恐らくUSBメモリは二つあったんだろうな、データの状況から見る限り 」
そう言いながら中年の男は相変わらずパソコンを触る。そしてそんな彼に男──Kと呼ばれていた男はこう尋ねた。
「…流石にあの瓦礫じゃ、無理か 」
「ま、一応は日本の警察が優先ではあるからな
あったとしても日本警察に回収されているだろうさ…だが、これのおかげで色々分かったぞ 」
そう言いながら中年はパソコンのモニターにいくつかのデータを表示する。
「あの組織がパンドラ計画を開始したのは10年くらい前、初期実験台は全員死亡、その後主任研究員の交代が二回あって今に至る…ってトコだぜ 」
Kはモニターを眺めながらこう尋ねる。
「研究員の身元は分からないのか? 」
「その辺のデータも抜かれてるぜ、あとは…この計画はお前も見たんだろうが、原材料は人間だ
どうやら人間を改造して生物兵器を作ろうとしてたらしいな 」
「…知ってる
それより、彼のデータは? 」
「実験の記録は後半からのデータ、あとは改造後の生体としての状態をチェックしたデータがあるな
…脳改造と洗脳はもう少ししたらやるつもりだったらしいぜ 」
男はKにそう言いながらヤベェよな、と付け加える。
それに対してKは尋ねた。
「…元が人間なら身元は分からないのか? 」
「前半のデータにしかその情報は無いから分からない
今は別の…そういうデータが残っていた奴らの身元を諜報部に送って、調査をさせる予定だ 」
男の言葉にKは頷き、それから画面をしばらく眺めていた。