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Fake the Heaven  作者: 霧島雅狼
第1部
5/6

参 開けられた箱

第1部は完結

ゲームでいうチュートリアルみたいなものでした。




 「…パンドラ計画、ですか? 」




 「ああ、開けてはいけない箱だよ…全く、日本人のくせに小洒落た名前を付けやがって 」




 そんな話を続けつつ俺は森の中を進む。




 …そう、あのUSBに記録されていたのはあの施設で行われていた計画。

 ──パンドラ計画と呼ばれたその計画は、最初は二人の研究者が主体となって進められ、その後一人は消え、もう一人がこれまで進めて来たものだっま。




 「…あのUSBではデータは不十分だったし、何より全部は見れてはいなくてな

 だが断片的なら何をやっていたのかは…分かった 」




 俺はこう続ける。




 「まずは追われている"証拠"を捕まえるぞ

 …どっちみち、今のままじゃ死ぬからな 」







────────────




 カサッ、そんな音と共に麻酔針は地面に落ちる。




 「お、オオカミさん…大丈夫…痛いの…? 」




 心配そうにそう言う少女に、狼は首を横に振る。

 …どうやら、あまり麻酔は効いてはいなかったらしい。



 撃たれた際、狼は少女を抱きかかえ、そのままその場から逃げ出した。

 そうしてそのまま追っ手を振り切り、今に至る。




 「…本当に大丈夫? 」




 その言葉に狼は頷き、再び少女を抱き抱える。




 「…ゲホッゲホッ 」




 狼が少し咳き込む。



 丁度その場所が暗かったので少女には分からなかったが…狼は咳と共に少し、血を吐いていた。



 「狼さん…? 」



 狼はその言葉を聞くと口元の自らの血をぬぐい…走り出そうとした。




 「──! 」




 カチャリ。



 そんな金属音と共に狼の頭に銃口が突き付けられる。




 「…日本語の方が通じるか? 」



 気がつけば彼らは──武装した人々に囲まれていた。











 ──それから、少し後。




 『こちら村田、森林内で血痕を発見

 おそらく付近に居るものと思われる、どうぞ 』




 『了解、念の為サンプルを採取し、発見を急げ

 対象には麻酔を撃ち込んである、あと何発か撃ち込めば動きも止められるだろう 』




 「…ま、ちゃんと動けてるみたいだがな 」




 ──場所を移動し、相変わらず狼と少女は囲まれていた。


 最初に狼に銃口を向けた男はもう彼らに銃口は向けず、そう二人に話しかけている──一応は周りの隊員もそれに合わせ銃を下ろしてはいたが、いつでも撃てる準備を整えていた。




 「さて、俺の名前はエージェントK、名前はここじゃ言えなくてな…ま、後で興味があるなら話すさ

 そして俺たちはある組織を調査する組織の…まあ、先遣部隊みたいなモンだ

 まあ嬢ちゃんにも分かるように言えば、悪い人たちにダメって言う為にお仕事をしている…でいいか? 」





 そう言いながら男は被っていたマスクを脱ぐ。

 その容姿は白髪混じりのオールバックの男で、彫りの深い顔は日本人というより…ヨーロッパ系の人種のものだった。


 そんな彼の言葉に仲間の一人は頷き、少女は狼の後ろに隠れている。そして…当の狼は。




 「グルル… 」




 「おいおい、そんな怖い顔はしないでくれ

 手荒に扱った事は謝るが、多分…君に麻酔銃を撃った奴らに捕まるよりはマシだと思うぜ 」




 狼は少女を庇うように、Kに対して唸り声を上げていた。




 「そうやっているのはいいが、君には時間がない…それは君が一番良く分かっているはずじゃないか? 」




 そんなKの言葉に、狼は驚いた顔をする。




 「このままいけば、君は死ぬだろうし彼女もきっと奴らに捕まって酷い目に合うかもな

 …だが、俺たちなら大丈夫だ 」




 彼は相変わらずKを睨んでいたが、唸り声は上げなくなった。




 ──と、その時。




 狼は目を見開き、激しく咳き込む。



 「お、オオカミ…さん!? 」




 ビチャビチャと口から吐き出された血が地面を濡らす。




 「…どうやら返答を待つのはやめた方がいいな

 衛生兵応急処置、急いで運ぶぞ!

 …代わりに聞いておこう、お嬢ちゃん、"オオカミさん"と一緒についてきてくれるかい? 」




 「それでオオカミさんは助かるの? 」




 少女のそんな言葉に、男は頷く。




 「ああ、約束する

 …絶対に、君たちを助ける 」




 少女は、何も言わずただ頷いた。


















────────────





 ──発見には至りませんでしたね 」




 翌日、崩落した施設。

 そこで麻酔銃を撃った隊員達は集まり、施設の調査を再開していた。




 「…まあな、だが収穫はあった 」




 一人の日本人の男はそう言うと──袋に入っている何かを取り出した。

 それは、中心から真っ二つに破壊されたUSBメモリで──べったりと血が付いていた。



 「壊れてはいるが…おそらく取り逃がしたあいつが持っていたんだろう

 …ま、手がかりにはなるだろうさ 」




 そう言うと男は近くに停めてあった車に積まれたジェラルミンケースにUSBメモリを入れる。



 "警視庁公安第11係"



 ジェラルミンケースの表面には…そう書かれていた。

と、いうわけでこれにて第1部は完結です

次回からは第2部に入ります。

よろしくお願いします。




【第2部 予告】

──それは、禁忌に踏み込み自らを堕とした者の末路か、それとも。

記憶はもはや無い、残るのは記録のみである。

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