壱 廃墟崩落
「こちら部隊アルファ、目標地点に到着…酷い状態だな 」
──とある山間部。
かつてこの場所には二階建ての病院が…人っ子一人殆ど来ない様な場所に何故病院を建てたのかは分からないが二階建ての病院が立っており。
勿論廃墟となった建物はずっと放置されていた。
そしてそんな建物は今残骸と化しており、そんな建物の前には何人かの人がいた。
彼らは何故か警察の特殊部隊の様な服装に装備を身に付けており──更には、銃まで持っていた。
「隊長、本当にこんな場所に日本創研の施設があるんですか? 」
ふと、一人が先ほど無線で話していた男にそう尋ねる。
「ああ、信頼のある情報源からそう聞いている…最も、恐らくバレたから全て壊したんだろうよ
この分だと証拠も…残ってはいないな 」
そんな事を言いつつ男は施設の残骸へと歩みを進める。
そしてその中で、男は足を止めた。
「…エレベーター、か 」
そこにあったのは、エレベーターボックスの残骸だった。
まあ、残骸とはいってもかなり原型は留めており横倒しになったその箱は、ポッカリと扉を開けていた。
そうして男はその中を覗き込み──そうして、その中に入った。
「隊長? 」
「ほら、あったぞ…多分手がかりが 」
そう言った彼の手には、一つの小さな…USBメモリーが握られていた。
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「…美味しい 」
もぐもぐ、と言った感じで少女は簡単に焼かれただけの肉を食べる。
そしてその横で──それは何処からか狩ってきたのであろう肉を枝に刺し、焚き木で焼いていた。
それは、人の様な姿をしていたし、人間の様な手の形だった。
しかし、その全身は何故か灰色の毛で覆われておりその顔は──いや頭は…人には見えない、犬…いや、狼の様であった。更に尻尾もあり、脚に至っては人と獣の合いの子の様に見える。
更には…彼は身に付けている血塗れの白衣以外何も身に付けていなかった。
そしてそいつは、少女を尻目に狩ってきたのであろう鹿の死体をナイフで捌いている。
「あの…ありがとう
ご飯…くれて… 」
その言葉に狼は頷く。
──彼は、喋る事が出来ない様だった。