序・少女は独り
その少女は、歩いていた。
俯いた少女の全身には、大量の傷跡や痣があり──彼女は何度も親から虐待され、こうして棄てられたのだ。
少女の周りにあるのは、ただ木と、春になり茂り始めた草だけ。
彼女は──人が殆ど来ないような山の中に棄てられたのだ。
長い苦痛から解放されたのは良かったのかもしれない、彼女の着ているのは薄汚れた薄着の服だから凍死してしまう冬では無く春に棄てられたのも幸運だったのかもしれない。
だが──その山は、一般人が立ち入らない様な山中であり、彼女を棄てた親が残したのは、着ている服とたった一つの菓子パンのみ。
他は何も無い、恐らく助けが来る事は無く…まだ7歳の小さな少女の運命はきっと、食料が尽きて餓死するか動物に襲われて死ぬ、その2択だろう。
事実、彼女は棄てられてから2日が立ち、少しずつ食べてきた菓子パンはもう一口程度しか残っていなかった。
ふと、少女はちょうど座れそうな木の根を見つけ、そこに座る。
どこまでも広がる山の森。
「もう私、死んじゃうのかな… 」
そう少女は誰に言うでも無く呟いて──彼女は、最後の一欠片を口に入れる。
彼女はため息吐いた。
空を見上げると青い空に、何羽かの鳥が飛んでいる。
「…いいなぁ、自由に生きて行けるの 」
そう彼女が呟いた時。
「…え? 」
──それは、唐突に少女の前に、現れた。
次回から本格的に入ります