プロローグ
・27部分までの修正を行っています
・マイペース投稿
・プロローグは短くしています。
少女の体は大量の水によって濡れていた。制服の生地の色が白い部分は透けており、肌が薄く見え始めてる。すぐに着替えなければいけない状況だ。しかし少女はそんなことはお構いなしで、水溜まりに映った自分の姿から目を離そうとしなかった。そして手で髪に、顔に、そして胸に触れた少女は理解する。先ほどから見ている女の子の姿は他でもない自分なのだと。
髪が長くなり、控えめではあるが胸が膨らんで柔らかい感触を感じる。これはまさしく女の子の体だ。
「……どういうこと?」
「これが二つ目の条件だ。私と交わした約束を果たすその日まで、お前にはその姿でいてもらう」
「……そんな」
人は精霊と契約を結ぶことを夢見る。そして少女となったエルメス・バークもその一人だ。精霊は人間と比較にならないほどの膨大な魔力を有している。もしもその力で人を支配しようとすれば容易に成し遂げられる存在だ。しかし人はそんな精霊を恐れない。なぜなら彼らが争いを基本的に嫌っていることを知っているから。そして何より、信頼できるパートナーとして、危機に遭えば共に助け合えることが分かっているからだ。
世の中には人と精霊が力を合わせて世界を救うという冒険譚が数多くあり、子供たちが憧れを抱く。エルメスも自分の精霊とそんな冒険をすることが夢だった。
そしてその日、期待を胸に契約を行ったエルメスだが、早くも夢の第一歩で大きな試練が訪れていたのである。