第3話
自分の書斎に戻った俺は目の前のベットにダイブした。
なぜこんなことになってしまったのだろうか
俺はひとり嘆息した。
俺の年齢はまだ25である。 娘がいてもおかしくはないだろうがそれでも歳は0~5ぐらいのはずだ。今日俺を起こしてきたテトは17歳の女の子である。日本にいたころならば完全に犯罪者のそれである。
さっき心の中でお話ししたように俺は元は日本人だったのである。 別に勇者転移とかテンプレートなことを言うわけでもない、神様に会ったとかでもないのだ。 むしろ合わせてほしいぐらいである。 なぜ俺がこんな目に合わなければならないのか?
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俺は転生者だ。さっきテンプレートなことではないとか言いつつ可笑しいとは思うだろう。しかし俺は別に女の子をかばって助けたとかそうゆうのではない。ただとある地方の貴族の息子として俺の魂が乗った形となった。俺の元の器となったこの体の持ち主は父親の遺産として残ったこの屋敷に住んでいたようだ。しかしこの男もどこかのパーティーの帰りに事故に遭い意識は戻らずそこに俺の魂が入り込んだようだ。この世界の知識や向こうの知識と混濁したりして当時は意識が失うといったこともよくあったが、今では問題なく生活できている。
まあその時になんやかんやあって俺には3つの契約らしきものがかけられた。まとめてしまえばこんな感じ
・これから指定する20人を育てること
・20人を少なくとも一人で生活できるまでに育てること
・この家から自活できるようにして出ていかせること
この3つを達成することができれば元の世界に帰還することができる。 なぜこの3つが契約なのかはわからない。だが俺にはこの契約を達成しなければならない。
ここまで来るのに6年もの歳月を費やした。 あと5人、あと5人である。 向こうの世界がどうなっているのかわからないが俺には向こうでやり残していることがある、早くしなければ・・
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「パパ 少しいいですか?」
「テトか。今日は仕事はどうした?」
テトは現在冒険者の中でも相当の地位にいる。仕事はひっきりなしに舞い込んでくるはずだ。 もうギルドに出かけているものだと思っていたのだが・・
「昨日のお話のことです。私がこの家から出ていく件についてなのですが・・・」
「おお!ついに決意してくれたか!そうだ、君にしかできないことがこの国には数多くある。これからも私はここで応援しているからね。そうだ、お祝い会をしよう!これを機にみんなに自分たちの力の自覚を促すというのがいいな!「・・・ですか?」 ・・・ん?どうかしたのかテト?おーいファイス。今日はお祝いだ!夕食は豪華に頼むぞ!」
よし!さっきあんなことを考えていたせいか神様が俺の言うことを聞き届けてくれたのかな! この調子で残りの19人もこの調子で独り立ちさせてやるぜ!「・・・パ!・・・・パ!」
ん?なんだよ。人が気分良くなっているのに・・・
「パパ!」
「な、なんだテトよ。そんなに涙をためて。」
「お祝いなんて・・・やっぱりテトはいらない子なんですね。わかりました・・・ならもうこうするしか・・」
急にテトはどこからか取り出したナイフを自分の首元に‥………って待て待て!!
「な、何をしているんだテト!!!馬鹿なことはやめるんだ!!」
俺はテトの暴挙を止めようとナイフをつかむ。 刃に触れてしまったようで血が出てしまうがそんなこと関係ない。 もしお前が死んでしまったらどうするんだ?? ほかのやつらは俺を見損なって俺をこの家から追い出そうとしたり、 万が一にもテトが死んで契約が履行されなくなったらどうする?俺は一生この世界に残されてしまう!! それだけはあってはならない!!!
「だってパパにいらないって言われたらこんな世界で生きていく価値なんか・・・・」
ハイライトをなくした目でこちらを見てくるテト。 しまった...この子たちの多くは俺と出会う前に虐待などにあってきた。それによって{いらない} {捨てる} などのキーワードは琴線に触れてしまい当時の記憶がよみがえってしまう。 こうなったらいつものやつで落ち着かせるしかない!
「テト、君はいらない子なんかじゃないよ。 これからもいてほしいぐらいだ。 でもね、私は君たちの親として君たちの成長を何よりも望んでいる。 それは親元を離れて初めて体験できることだ。」
「いいえ!!私はパパの近くが一番成長できます!!ですから私をいつまでもおそばにおいてください!!でなければ私は・・・・私は・・・・・」
ナイフにこもっている力が増えてきた。いたたたた・・ 食い込んでるから。
「わ、わかった。落ち着いて話し合いをしよう。」
「ずっとおそばにおいてください。何があってもテトを見捨てないでください。」
「わ、わかった。努力はしよう。」
口約束だから・・・・・・まあいいよな?
「ふふっ・・・それならばしょうがないですね。パパを起こすことができるのは私だけですからね! ってああ!いけない! パパ手から血が出ているじゃないですか!?私のせいですみません。 今血をふき取るのでじっとしてくださいね!」
そういったテトはおもむろに俺の手から流れ落ちる血をペロペロと舐め始めた。 おいおい、この子は何しちゃってんの?
「おいテト、何をしているんだ。汚いからやめなさい。」
テトは俺の血をペロペロ舐めたかと思ったら下を向きながらぶるぶると震えている。どうした?やっぱり血なんてまずいだけだろ、ペッしなさいペッ
「んっ、・・はぁっ。 す、すみません。とっさのことで動転してしまいまして・・・ ハンカチで血をぬぐいますので」
テトはポケットから白いハンカチを取り出して俺の手を拭いてくれた。 一時はどうなることかと思ったが落ち着いたようだし どうやって追い出すかはまた考えるようにしよう。
「では私はこれから仕事に行ってまいります。パパ、約束破らないでくださいね?」
テトはくぎを刺して部屋から出ていった。
結局 また追い出すことできなかったな・・・・・・