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EX:ステージ  作者: 天弥 迅
開幕
14/19

No.14

地から引き剥がしたアスファルトの破片。それが散弾となり、ぶつかる。

これに彼は僅かに悲鳴を上げた。


「くっ」

「あら? 頑丈そうだけど痛そうね?」

「何、石ころを投げられたくらいだ」

「そのまんまじゃない」


呆れながら今度は自動車が時速にして3桁台のスピードで迫る。エスは受け止めていた電柱で無理矢理逸らしてそれを投げ放つ。

だが、サイコキネンシスの力により勢いのついた電柱も簡単に止まってしまう。


「無駄よ。そんな力には滅法私は強いから」

「なら直接………」

「したらその子は無事じゃ済まないわよ」

「ッ!?」


彼なら肉弾戦に持ち込めば有利なのは間違いない。しかし、それをすれば向こうは無防備な九条に狙いを定める。

エスはそんな犠牲を選んでまで勝ちにはいかない。いけない。

そう。それがヒーローの弱点。悪党に徹する相手に苦戦する。ある意味宿命ですらあろう。予想外だとすれば実行しているのはまだ幼い少女である。


「卑怯で結構よ? さっき言ったわよね? 手段は選ばない、と」

「くっ………」

「どうする? 私としてはそのままでくのぼうになってくれると助かるけど」


完全に主導権を握られ不利になる。幾ら丈夫な肉体を持つ彼でも車やら電柱やらが何十回も当たれば深刻なダメージとなる。どれだけ、何処までいってもあくまで無敵の存在ではないのだ。


「やれば良いさ。俺は絶対の倒れねえ」

「………」


分かっていながらも真紅のマントの男性は不動に徹する。その大きく見える身体を壁にして。


「無理ね。バカじゃないの?」


ここまで来れば底抜けの馬鹿だ。仮にそれが彼の心情だとしても馬鹿以外の言葉が思いつかない。

が、罵られるヒーローは顔に笑みを張り付ける。


「無理じゃないさ」

「いや、これはお話みたいな架空じゃないの。非現実的だけど………?」


ここで矛盾した疑問を彼女は持つ。自身が知るような世界ではない。だが確かに存在する非現実的な者達。本物の異端者。

ならば彼もまた本物なのか?


「ヒーローってのはいつでも無理や無茶をしてきた」

「………」

「だがな? 無駄にはして来なかった。いつだって誰かの為に苦難を乗り越えて来た。皆が憧れる英雄として」

「ッ!」


本物だ。と泉 いづなは確信する。だからこそエスの言葉には重みがある。絶対にやってみせ、成し遂げると言う強い意志が。

そうだ。そうだった。それが彼のの最も誇るべきものであり、人々に希望を持たせる力。


「俺はヒーローなんだぜ?」


心の強さだ。


「悪に屈したりはしないさ」

「………でも、それならこの状況どうする気? ずっとそうしているつもりなの?」

「ああ」

「拉致があかないじゃない」

「お嬢ちゃんが折れるまでだな」


馬鹿か? いや馬鹿なのだろう。だが、平気な面でやり遂げるのがエスなのだ。

であればどうするのかを問うのは相手にではなく、自分自身になる。一生壁になって守り続けるであろう彼を出し抜く方法。

実は意外にないこともない。

何故ならーー。


「忘れてはないだろうけど」


言った直後。

泉いづなは姿を消した。


「なっ!? 消えた!?」

「テレポート」

「!?」


背後から聞こえた声に振り向く。が、既にそこには声の主の影もない。そして次には先程まで相対していた場所に彼女は戻っていた。

九条 真司を抱えて。


「超能力者の定番でしょ?」

「しまった!?」

「別に私はあんたを倒す必要はない。それは他の化物さんにしてもらうわ」


そもそもの狙いは彼を連れ去り、向こう側の戦力の動きを鈍らせること。彼女が聞いた限りではどうにも厄介な連中ばかりが集まりつつあるようだ。

いや、引き寄せているのだろう恐らく。きっとこの少年にはその力があるのだ。眼前にいる彼が唐突に舞い降りて味方をしているように。


「残念。また会いましょう。次があるかは知らないけど」

「くっ!! 待てっ!!」


これまでにない動揺を見せるエス。が、もはや遅過ぎる行動であった。

やはり、ヒーローの定めとしてヒロインが連れ去られる展開も避けられはしない。今回はヒロインではないが。


「じゃあね。ヒーローさん」


そうして未来人の少女はテレポートで脱出を図る。

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