No.1
世界は非情で残酷だ。人々は生まれながらにして決められた鳥籠の中で縛られ、その人生を終える。それが世界の法則。自由だの平和だのを幾ら口にした所で流れを変える事象なんて起きはしない。格差、争い、貧困、労働、虐め。様々な問題は消えはせず今も尚続いている。それを言いだせば世界が、では無く人が、となるだろうけど、結局はこの世界がそうなってしまっているのだから他に説明のしようがない。
特に自身のような人間には居心地が悪い。自身も等しく鳥籠の中で縛られた生活を強いられているだろう。
いや、もしかしたら蚊帳の外にいるかもしれない。
ただただ無意味に過ぎる時間。
両手には何も無い。何も持っていない。
自身の中には何一つ生きる糧とする物、生きてきた証すら存在しない。
自身が特別ではない。自身の特別と呼べるものがない。
変わらない、変えれない人生。
もう自身はーー僕は疲れ切ったのかもしれない。
期待も、希望も、目的も、未来も、大切も、特別もない世界で生きる事にーー。
そんな時だった。
僕の目の前に一人の少女が現われた。
色素が抜けたような真っ白な女の子にしては短めな髪。まるで純粋で汚れを知らない無垢さを漂わせた彼女は立ちはだかるように動かない。
が、ややあって。
「君は望むかい?」
問いがあった。
何を? と返したいのにその時の僕は口を一切開くことを許されないかのように動けずにいた。
代わりに働いた思考が喋る。
僕は彼女を知っている気がする。
なのに判らない。
不思議な雰囲気を纏う白髪の少女は更に別の問いを投げかける。
「ならゲームをしようじゃないか?」
ゲーム?
「私が勝てば私の好きなように世界を変えさせてもらう」
世界? 好きなように?
一体何を言い出すのだろうか?
全く持って理解出来ない。そもそもゲーム事態の説明もなく、僕は有無の返事すらしてないのに。
そしてどうして自身にその勝負を挑むのか?
それではまるで僕が負ければ世界がーー。
「もし君が勝てば………」
真っ直ぐ視線で射抜かれる。大きく開かれる真紅の瞳。弧を描く口。まるでこの邂逅を楽しんでいるみたいだ。
君は一体何者なのだ?
「私は君の前から消えて上げよう」
指を弾かせながら言ってのけた姿を忘れまいと見据えながらそこで僕の意識は暗転したのだった。