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ふと、目が醒める。岩の天井が見える。
…何処だ?俺は確か家を出て商店街に…行って…
『お前さえ居なければ!』
…あぁ、殺されたのか…は?殺された?今サラリと思ったけど…殺されたのか、俺。
そうだ…けど、なんで生きてんだ俺?確か腹に刺されて倒れた所を滅多刺しの筈なんだが…
周りを見渡すとゴツゴツとした岩肌が見える。立ち上がってみると、身長がかなり伸びて居た…て言うか高っ!何故に⁉︎
取り敢えず何か自分を見れるものを探そうとすると、丁度目の前に池があった。
試しに覗き込み、俺は池に映ったその姿を見て固まった。
二メートル越えの身長と内臓と肉の無い腹腔。萎びた皮に濁った色をした瞳の目玉をぎょろりとさせた瞼の無い目。唇の無い口、頬のこけたところどころ白骨化している顔。
しかし、皮の下に筋肉はしっかりとついているのかガッチリとした体格だった。幸いと言うべきか、髪は生えていた。黒髪で艶のある髪だ。
しかし、ボロボロの黒のズボンに黒の革靴以外何も身にまとっていない。武器は…嫌に黒くしっかり磨き込まれたボルトカッターが右腿の黒革のホルスターに収まっている。
て言うかさ…でか過ぎだろ⁉︎何これ⁉︎三段に折り畳まれたグリップを伸ばすと百九十センチ強ある。
因みに腹に至っては、前述した通りそもそも肋骨から下には肉も何も無い。
「あ、あー…あぁうぁー」
一先ず声が出ることには安心した。どこから発声してるかは知らんが。
けど、この姿は無いだろ⁉︎生き返ったのは儲けだよ…死んでるけど!
…生きてるかわからんな…しかもこの姿…この世界が所謂ファンタジーでは無い事を願おう。まずファンタジー世界だったら確実に狩られるだろう…
…………………………まぁ、確実にゾンビがいる時点で(自分だけど)既にファンタジー感が半端じゃないけど…
諦めよう。うん、人間諦めが肝心だ。そして取り敢えずあの馬鹿神は今度しばこう。輪っかじゃなくてあいつ自体真っ二つにしてくれるわ!
「あ、あー…はぁ」
さて、今はこの状況をどうにかするか…だ。
取り敢えずこの姿のままだとまずいな。
一先ずこの洞の奥を探るか。
暫く歩いていると少し開けたところに出た。そこには緑の肌に小さなツノ、醜い顔に百二十センチほどの身長。汚れてボロボロの腰布に棍棒。
「なんだこいつら?」
正直、こんなキモい生き物は見たことが無い…まさか、あのテンプレで有名なゴブリンじゃ?
「ぎが!がぎぎぐが!」
「ごげ!げごりぐげー!」
一体だけ赤い。ケチャップでも飲み過ぎたか?
つか、デカくね?なんであいつだけ百五十くらいあるんだ?しかもツノも一本でゴツい。武器は…何故にマチューテ?
いや、ここは空気読んで西洋っぽいダガーとかだろ⁉︎KYか⁉︎お前はKYなのか⁉︎
そんな事を脳内で一人漫才しながらフリーズしてると、赤い奴が顎をしゃくる。すると次々とそいつらは飛び掛かってきた。
「何でやねーーーーーーーーーん‼︎‼︎」
俺はホルスターに収まっているボルトカッターを抜き放つと横に薙いだ。
途端にグチャグチャグチャ!と言う湿った音とともにそいつらは頭を潰れた状態で横に吹き飛んだ。…あ、こいつら中も緑いんだ…じゃなくて、キモ…
「ぎぎがぎぐー!」
何か赤い奴が騒ぎ出した。
するとその場を円状に広がる緑ーズ。そこの真ん中に赤い奴は歩み出し、手招く。
…あ、決闘か?もしかしてもしなくても。ま、そっちの方が早く話がつきそうだ。いや、間違えた。ケリがつきそうだな。
俺はボルトカッターを肩に担ぐとその円の中に入る。
「ぎぐぎぎー‼︎」
一体の緑い奴が棍棒を俺と赤い奴の真ん中で振り下ろした時、赤い奴は突っ込んできた。
☆★☆★☆★
ジェネラルゴブリンはその日、自分の生息するダンジョンフロア内でボスであるゴブリンキングの側近からの命令に従って、訓練をしていた。
ジェネラルゴブリンは前世のベトナム兵としての記憶があった。
その記憶に従い、只管に己が軍を指揮した。
取り敢えず棍棒の素振りをやらせた後休憩をしていると、闖入者が来た。
それはあり得ない事だった。
何故か?それは自分達にもわからない。けど、何か本能とは別の何かがここに留まれと命令してくる。
だからこれ以上の場所には移動できない。出来るはずがないのだ。
なのにそいつはそこに来た。姿はまるで人間だが、人間はあんなボロボロで腐臭を漂わせたりしない。
手始めに切り込み隊を突っ込ませるが、変わった武器らしきもので横薙ぎにされ、潰された。
頭の中で本能のアラームが鳴る。しかし同時に何処からともなく送られる命令がその侵入者を撃滅しろと言う。
仕方がない。せめて一太刀でも浴びせられたら良いところだろう。身長からガタイ、さっき見た速度から考えて勝つのはほぼほぼ無理だろう。
これ以上の無益な殺生は無駄だ。何より、姫に近寄らせないためにも。
部下達に円を作らせて決闘場を作る。
そこに入り手招きすると侵入者は武器を肩に担ぎ、悠々と入って来た。
既にジェネラルゴブリンの背中には冷や汗が出ている。しかし、勝たねば。勝たなくては姫が殺られてしまう。
部下の振り下ろした棍棒を合図にジェネラルゴブリンは駆け出した。
ジェネラルゴブリン特有の瞬発能力をフルに発揮し、瞬時に間を詰める。
予想外な事に相手はそれに驚いたのか一瞬固まった。
その隙に武器を持つ右手を肩から切り落とす。
ジェネラルゴブリンの持つ武器…マチューテはジェネラルゴブリン自身の前世の記憶通り毎日研いだり、つかの調整などをしてメンテナンスをして来たため、刃こぼれもない。
その刃は相手の肩口にめり込み、遺憾無くその切れ味を発揮し、斬り飛ばした。
たった一人で今腕を斬り飛ばした相手といえど、そいつは自分の部下五体を瞬時に挽肉にしてみせた。油断はならない。
そのまま相手が痛みに屈むのを待ったが、その瞬間体に衝撃が。遅れて痛みが走り、気が付けば宙を舞っている。
意味が分からない。何が起きた?
そう思ってみると、そいつは痛みなどないように残った左手でジェネラルゴブリンを殴り飛ばしていたのだ。
その際にジェネラルゴブリンは見てしまった。相手の顔とその姿を。
濁った目。中身のない腹。萎びた皮に包まれた白骨化しつつある唇の無い顔。
それは、ゾンビ。しかも自分の知る限り、このダンジョンには存在するはずの無い人から出来たタイプだ。
普通、ダンジョンからゾンビが発生すると、その姿は基本的に生々しい湿った肉と青い肌など、モンスターの特徴を持ち合わせている。
つまりゾンビなんて名前など名前だけであって全く別のモンスターと認識できるものであり、生物なのである。当然、腐臭などしない。
が、目の前のそれは明らかに腐敗の進んだ死体が歩いているようにしか見えない。
「強いな…けどほいっと」
そう一言喋ったそいつに、空中でなんとか顔を向けた瞬間にその顔に何かが飛来し、そこでジェネラルゴブリンの意識は一瞬の痛みと共に永遠に消え去った。




