表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編・ショートショート

フィルム

作者: 葦沢かもめ

 俺は恋をした。彼女は俺をいつもじっくりと見つめてくれている。だが俺は彼女に触れることすらできない。


 犯人が路地裏を逃走している。追いかける女警官が銃を向ける。銃弾が発射され、犯人の腕を掠める。彼女は舌打ちをして、再び追いかけ始める。


 狂った殺人鬼が、斧を彼女に振り下ろす。家の中は赤く染まり、彼女の夫も、幼い子供二人も、一家は皆、息絶えた。窓から漏れる夜の月光に照らされて、殺人鬼は咆哮する。


 気付いてもらう為に、俺は何でもした。いや、本当は気付いてくれているのだ。だって彼女は何度も俺の名前を読んでくれている。俺の努力を何度も褒めてくれている。それでも俺の言葉に耳を傾けてくれていないのは、俺がチョイ役だからなのかもしれない。 

 

 俺は「光景」。あらゆる映像作品の一瞬としての存在。

「ねぇ、今の俺はどうだった、監督?」 

「うん、また良いシーンが撮れた!」

 彼女の笑顔が、俺の生きがい。

2016/09/03 初稿

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ