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融解

作者: 乾 稀

稚拙な文章ですが、精一杯書きました。中高生や大きいお友達に読んでもらいたいです。

カチッ


突き刺す風に苛立ちを覚えながら大きく溜め息をついた。ビール1本ぶら下げただけで悴んだ指は悲鳴を上げ、真っ白な掌はドアノブを拒絶する。痺れた爪先では靴も脱げず、踵を叩きつけることでやっと解放される。「ただいま。」床の雑誌とカップ麺を踏み分けて1人佇む暗い部屋。返事がないのは言うまでもない。足元を見守る唯一の月明かりも今日は不機嫌そうに身を潜めている。今夜は眠れそうにない。「乾杯。」ぼそっと呟く私の声は壁に吸い込まれ、再び静寂が訪れた。これで酔えたら楽なのに。私は静かに目を閉じた。

四年前、妹が死んだ。生まれつき心臓が弱く、体調を崩してからはあっという間だった。「お月さまのところに行ったらウサギさんとおもちつきしたいな。」まだ幼いながらに自分の躰に起こっている異変に気づいていたのだろう。身を起こすことすら辛いはずなのに彼女はよく笑っていた。母も私もよく言葉に詰まってしまった。「そしたらね、パパと一緒にお雑煮食べるの。うっかり残してもパパが食べてくれるもんね。」もうママにおこられないよ、と、妹は私達に笑いかけた。数日後、妹は棺の中でいつもと変わらない笑顔を私達に向けていた。一度も使われなかったランドセルを抱いて母は震えていた。このランドセルは父が生前に買ってきたものだ。愛娘の成長が楽しみで我慢出来ずに買ってきた「らしい」。というのも、このランドセルが父から娘に手渡されることは無かったからだ。仕事帰りにランドセルを買った父は交通事故に巻き込まれた。助手席のランドセルは無傷だったが父の躰の損傷はひどいものだった。

遺された母と私は一時的に母の実家に住んでいた。母の心は空っぽだった。気力の失った母との二人暮らしは私にとって辛いものだったので、私から田舎の実家に戻ることを提案した。私はすぐに上京したが。父と妹の死は母だけでなく、私にとっても辛いものであったのは確かだった。必死に勉強して都内の進学校に入学した。それが私の現実逃避の仕方だった。難関大学合格を目指すために勉強する。夢なんてなかった。ただ本当に現実逃避をしていた。青春は青い春と書くが、私にとっては淡い春だった。

そんな私の唯一自慢できることは全ての大学、学部を志望できる成績だったことだ。当たり前だ。四六時中勉強していた。とりあえず言わずと知れた有名大に入った。母の実家は大騒ぎだった。だが、夢も希望もない私の居場所などどこに行っても見つかるわけがない。何もかもが退屈で、気づくと大学は中退していた。勉強に集中できるように、と送られていた仕送りは中退してから手をつけていない。生活費のために日雇いで働くようになった。一番はやはり工事現場だ。運良く運が悪ければ死ねる。

そして、今日。季節は冬。

冷たい風を感じて私は目を覚ました。床で寝ていた。それに窓が開いていたようだ。?、窓を開けた記憶がない。手早に窓を閉めようと近づくとそこには妹がいた。そこには妹がいた。妹がいた。妹が。

ついに狂ったか。自分に呆れながら妹を見ていた。というよりも目を逸らせなかった。病床に伏していた頃よりも少し幼い気がする。ベランダで1人雪だるまを作っていた。とは言ってもそれほど積もっている訳ではない。新しい材料を求めて妹は闇の中へ消えていった。何が起こっているのか。窓を開けて雪だるまに近づいた。本物だ。いや、偽物の雪だるまがあるのかは知らない。ただ、ベランダの雪だるまはきちんとそこにあった。

妹が戻ってきた。走ったのか少し額に汗を浮かべている。ふぅ。と、汗を拭うとまた雪だるまを作り出した。妹は私の存在に気づいていないようだ。少し意地悪してみたくなる。雪だるまの頭を叩いて少し削ってみた。??という顔の妹は「なんで?なんで?」と言いながら削れた部分を直している。もう一度叩いた。妹はギョッとした顔をして周りをキョロキョロ見渡している。これは面白い。今度は妹を叩いてみた。もう妹は何が起こっているのか分からず涙目になっている。もう一度叩こうとして私の手は止まった。妹が見えなくなったのだ。いや、妹は死んだ。見えるも何も…今日はもう寝たほうがいい。自嘲気味に私は布団に潜り込んだ。潜り込もうとしたというほうが正しいだろうか。布団に入れない。そこに何かがいるかのように布団は奇妙に膨らみ、滑り込ませようとした足に何かが当たる。

衝撃。軽いとも重いとも言えない重圧が私にのしかかった。グッと胸の辺りが締め付けられる。作業着に皺が寄る。!!、妹だった。「お兄ちゃん!見えるの、見えるの??」驚愕のあまり言葉が出なかった。代わりに抱き締めた。「お兄ちゃんだ…やっと…お兄ちゃんだ…」抱き締め返す妹。そしてまた見えなくなる。1人しかいないはずのこの部屋には2人分の体温が感じられた。「…、!?」見えない妹に呼びかけようとしてハッとした。妹の名前が分からない。どう呼びかければよいのか分からない。妹との記憶がない。まるで私に妹などいなかったかのように。お兄ちゃん、とは?


ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ「んっ…」リリリリリリリリリリリリリ止めるリンッ


どこに焦点を当てるでもなく暫らく惚ける。深い溜め息、深呼吸。教科書と白紙の課題を鞄に詰めてブレザーに着替える。ちらと窓を見る。そこには崩れた雪の塊があった。

夢オチかよwと思うかも知れませんが、その夢オチこそ今私達若年層の内面にあるものだと思います。俺TUEEEEやハーレム系の物語が多すぎて私達の感覚は麻痺しかけていると思います。ラノベや漫画、アニメなど、いわゆるアキバ系文化は、普段味わえない非日常へと私達を誘ってくれますが、道の選び方では恐ろしい迷宮になってしまうと思います。ふと正気に戻るときこそ私達にも起こり得るオチではないでしょうか。アキバ系文化は日本から始まり、今後の世界を支えていく文化だと思います。だからこそ、このような形で皆さんにはアキバ系文化との付き合い方を考え直してほしいです。


この物語は、全体的には妄想癖が治りかけてきた中高生を思い描いて書きました。夢(妄想)と現実に出てくる雪は一応意味があって、夢の中の物が現実にも出てきてしまっているという意味で、妄想と現実の境が無くなっている私達の世代の危うさを描いたつもりです。それでも、半ば崩れた雪の塊としているのは、妄想から徐々に卒業(?)しかけていると暗示したかったというところです。


そういえば、初めて小説書いたので表現とか内容に感想頂きたいです。お願いします。自分としては、展開が速すぎたような気がします。いろんな本を読んで成長したいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 淡々と事実を連ねているようで、その端々には無視できない違和感、危うさがある。どこまでが本当で、どこからが主人公の妄想なのか。そこを敢えて曖昧にしていることで、最後の警鐘が身に沁みました。 …
2016/06/11 15:50 退会済み
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