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三十路から始める異世界生活  作者: 結城明日嘩
一章 33歳のルーキー
8/22

オークで溢れる街

主人公へのチートスキル配布。

どうなのかと思いながらも、物語を勝ち残って行くためには必要な部分もありますよねぇ。

 オークの群は大通りを進んで行く。わき道から繰り出される義勇兵に数を減らされても、その勢いは衰えない。

 街の中央にある広場では、義勇兵と開拓軍による防衛ラインが形成されていた。

 ベテラン義勇兵や重装騎士がバリケードを築いて、不退転の覚悟を見せている。

 そして広場での作戦が開始される。高い建物からオークへと、矢の雨が降り注ぎ、集団へと魔法の嵐が吹き荒れる。

 丈夫なオークはそれでも倒れずバリケードへと到達。しかし、待ち受ける騎士と義勇兵に討ち取られていった。

 俺は大通りの向こうへと渡れる場所を探しながら移動したが、結局のところ決戦が行われる広場を迂回して、ひぐらし亭へと向かう羽目になっていた。

 見慣れた店の前までくると、大斧を担いだイタオさんが、オークの死体を前に休憩していた。

 間近に見るとその身体は脂肪ではなく、筋肉に覆われているのがわかる。力士のような体型だ。

 しかし、それらの屈強な兵士もイタオさんに掛かれば倒されるのである。

 引退したとは言え、戦士としてはベテラン。店を守るために戦える。そう思って、マコトを向かわせたのだ。

「イタオさん、凄いですね」

「おうタダナリか、マコトはどうした?」

「え? ここに来ていませんか?」

「いや……」

 俺は嫌な予感に苛まれながら、大通りを挟んで見つけたマコトにひぐらし亭に向かうように言った事と、結構な時間がかかってここに来たことを告げた。

「どっかでオークを見つけて逃げ回ってるのかも知れねえな」

「そうですね、探してみます!」

 俺はいてもたってもいられず走り出した。

「おいっ、タダナリ!」

 イタオさんの声が聞こえたが、足を止める事はなかった。


 大通りから脇に入った路地。オーク達は大通りを侵攻していたので、路地裏は基本的には静かだ。

 それでも迷い込むオークもいない訳ではない。ただそれらのオークは義勇兵に倒されるらしく、死体がいくつか転がっていた。

「マコトー!」

 叫びながら走り回る。すれ違う義勇兵に、マコトを見なかったか確認してもわからない。

 目撃した場所から、ひぐらし亭まではそんなに離れていないはずだ。ルートも限られる。

 途中でオークを目撃して迂回した?

 探索範囲を広げて走る。

 心臓は爆発しそうに鼓動を刻む。

 それでも走った。


 そして見つける。

 白い大きめの神官衣。

 成長期だからすぐに似合うようになりますといっていたブカブカの神官衣。

 間違えるはずはない。

 でも信じられない。

 側まで駆け寄り、間違いないと確信するが、信じられない。

 冷たい地面に伏した姿。

 俺が駆け寄っても微動だにしない。

「ウソ……だろ? おい、冗談はやめろよ」

 ぬかるみに足を取られそうになる。

 神官衣の周囲には水たまりがあった。

 そんなところに寝てたら、服が汚れるぞ。

 早く帰って風呂に入ろう。

 なあ、起きろよ……。

 傍らにひざまずき、その身体を起こす。

 胸元に広がる黒いシミ。

 冷たく反応のない身体。

「まことぉ……」


「ここにいたか、タダナリ……」

 背後からイタオさんの声がする。店を守らなきゃならないはずなのに来てくれた。

 俺の様子から、すべてを察してくれたのか何も聞いてはこない。

 俺はただマコトを抱きしめるしかない。

 しばらくそのままで時が過ぎる。


「イタオさん、死者蘇生の魔法っていくらですかね……」

「そんな便利なモノはない」

 わかっていた。イタオさんは常々言っていた。多くのモノを失ったと。生き残るだけで成功者だと。

 だから臆病なくらい慎重に狩りをしてきたつもりだ。

 なのに、なんで、どうして……。

「強くなるしかねぇんだ。守りたいモノを守るには」

 イタオさんの声は優しく厳しい。

 俺が、俺達が、戦力強化を後回しにしたことが悲劇を生んだのか。

 俺がオークの群を渡れる実力があれば、マコトに身を守る力があれば、マコトを守ってくれる戦士を探していれば……。

 イタオさんの大きな手が、俺の肩に乗せられた。


「……タダナリ。マコトをやったのは、オークじゃねぇな」

 その言葉に顔を上げる。

「心臓を一突き、小型のナイフの刺し傷だ。オークは蛮刀や棍棒といった力任せの武器を使う」

 そういいながら、マコトの衣服を触る。

「財布の類もないな。物取りの犯行だ……オーク襲来中の火事場泥棒は重罪だ。警邏に捜査させれば、犯人が見つかるはずた」

「マコトを殺した犯人……」

 てっきりオークにやられたモノだと思っていた。でもやったのは人間?

 俺はマコトの左手首を見る。道具屋で買ったブレスレットがなくなっていた。

 イミテーションで作られた安物だが、マコトは大事に付けてくれていた。それすらも奪われている。

「マコトをこんな目に遭わせた奴は、捕まえる。許されはしねえさ」

「犯人が……いる」

「変な事は考えるなよ。この手際は、熟練だ。お前でかなう奴じゃない。警邏に任せりゃ、十分な罰を与えられる。ほぼ極刑は確定だ」

「ああ、わかってる。今の俺じゃダメだって……」

「おう、それじゃ、マコトのことは任せろ。その代わりウチの店を掃除しといてくれ」

 そんな事を言いながらマコトを抱えて去っていった。

 俺は一つの決意を胸に刻む。

マコト退場。

もう少し愛着が沸いてからの方がいいんでしょうが展開を早めにしました。

先の展開を思いつくと、早くそれを形にしたくなる……こらえ性がないんですよねorz

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