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三十路から始める異世界生活  作者: 結城明日嘩
一章 33歳のルーキー
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初日の精算はもちろん赤字

 ゴブリンにやられた左手は、狩人ギルドで教わった、薬草を使った応急処置で止血した。ズクズクと脈に合わせるような痛みはあるが、そこは我慢するしかない。

 初日の戦果を街で換金すると、野ネズミの肉が銅貨五枚、ゴブリンの銅貨は一枚では街の銅貨には及ばないらしく、換金したければもっと数を集めてこいとのこと。

 宿泊費が銅貨十枚であることを考えると、赤字である。食費も切り詰めないといけないが、ひぐらし亭には報告に行くべきだろう。


 マスターのイタオさんは、俺を歓迎してくれる。

「義勇兵での最初の試練は、最初の戦闘だ。ここで相手を殺せるか、ダメージを受けないかで生存率は大きく変わる。タダナリは、合格できたようだな」

「きっちり、手をかじられましたけど……」

 包帯を巻いた腕をさすりながら答える。

「そんなもん神官に治して貰えば一瞬だ。運が悪けりゃ、腕一本、足一本失う事もあるんだ。ソロだと生きて帰ってくるのも至難になる」

 改めてそう聞かされると、いかに薄氷の生還だったかを実感する。

「本当ならパーティーを組むのを勧めるんだが……」

 今日も相変わらずの閑古鳥。

 まあ、正直なところ飯が旨いわけでも、酒が旨い訳でもない。可愛い看板娘がいるわけでもない。立地は悪くて、街を探索する気がないと見つけられないし、建物もオンボロだ。

 物好きかあぶれものくらいしか来ないのだろう。

「というわけでタダナリ、早くパーティー組んで客を増やしてくれっ」

 髭もじゃの顔でウィンクしながら、親指を立てた拳を突きだしてきた。

 客引きが客頼みってダメ過ぎじゃね?

 とはいえ、この親父が客引きに立っても誰も来ないかもとは思うが。元前衛戦士だったイタオさんは、2m近い長身で、肩幅も広く、まさに熊を連想させる体型だ。間近にすると威圧感が半端ないのである。


 かといってパーティーか。

 俺としても自らの生存率を上げるためにも仲間は欲しい。

 本来、新たに義勇兵になった者達は、同期でパーティーとなるのが普通だ。

 しかし俺は痴漢容疑で総すかんを受けた。

 ならば欠員の出たパーティーに加えて貰おうとすると、年齢がネックになっていた。

 一般的に義勇兵として現れる者は十代らしい。二十代すら稀なところで、俺は三十路を迎えたおっさんだ。

 技量や経験もない先々の成長も見込みづらい……逆の立場なら、選ぶはずもない人材。それが今の俺だ。

 何らかの特技なり、知識なり、パーティーにして得になる要素を身につけないとなぁ。


 そう思いながらも宿に戻ると、疲れが一気に出て泥のように眠ってしまった。

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