そして俺は……
最初の梯子まで戻ると、即席の城塞が出来上がっていた。
砦の城壁を背に、半円状に土の壁が作られている。三カ所ほど出入り口があり、戦士や騎士がオークの侵入を阻んでいた。
そんな戦士の脇を通って、中へと入らせて貰う。
内部にはある程度の広さが確保されていて、いくつかのパーティーが休憩をとっていた。
その隣に腰を下ろして一息つけた。俺の周りには、はぐれ組の面々が集まり同じように座り込む。
かなりくたびれて、埃にまみれた状態だが、深刻な怪我を追った者もいないようで安心する。
「隊長さん、君のおかげで助かったよ」
そう話しかけてきたのは、右端の梯子を守っていた騎士だ。
「あのままあそこにいたらと思うとぞっとするよ」
「いやこっちこそ、こんなスペースを作っててくれて助かりましたよ」
「これも隊長さんが、土壁を利用して退路を確保したのを、ヒントにできたからです」
褒められ慣れてない俺は、照れくさくなってしまう。
「ここにいるみんなは、あなたに感謝してますよ。それじゃ、防衛を代わってきます」
爽やかな笑みをこぼして去っていった。モテそうだなと場違いに嫉妬する。
午前十時ごろに始まったオーク砦攻略戦は、昼過ぎに先行組が場内に侵攻。
それから夕方頃までかかって、制圧を完了した。中にはハイオークと呼ばれる上位種族もいて、カグツチ達も苦戦したようだ。
俺達はあのまま簡易城塞を保持し、大きな被害は出さずに作戦終了を迎えた。
「すいませんっしたっ」
作戦終了が告げられると、俺に向かって、坊主頭の青年が頭を下げてきた。
兜を脱いで、腰を90度折っての謝罪は、高校球児そのものだ。
城塞防衛組の中にいるのは知っていたが、こちらからどうこう言う気はなかった。
「あの時、変な容疑をかけて一方的に悪者にしてすいませんっした。ケイから詳しく聞いて、勘違いだとは分かったんですが、話す機会もなくて……」
「いいよ、いいよ。忘れてたくらいだし」
というのはもちろん嘘だが、あそこでぼっちになった事で得られたモノも多かったのだ。
「立派にリーダーしてるみたいだし、頑張って……誰も死なないようにね」
彼のパーティーはあの時のまま、欠員は出してないみたいだ。マコトを失った俺よりも立派なリーダーだろう。
俺は彼と別れてはぐれ組の方へ。仮初めとはいえ、リーダーとして過ごせて楽しかったと思う。へとへとだけど。
「街に帰るまでがオーダーミッションだから、気を抜かないように」
「はーい、せんせー」
先生って何だと思ったが、今の場面は先生でいいのかもという記憶が脳裏をかすめた。
何より声の大小はあれど、みんなが返事してくれたのが嬉しかった。
「隊長はん、約束忘れてへんよね?」
約束……?
何があっただろうか、防衛戦では色々あったために記憶が曖昧だ。
「ウチから一方的に奪っといて、覚えとらんのかい!」
人聞きの悪いこと言うな!
でも、おかげで思い出した。
「発動ワードの省略の件だろ、わかってるって……」
適当にごまかしつつ、魔力でトリガーを引く方法を教えた。彼女の腕なら、俺よりもすごいガンナーになりそうだ。
街につくと、義勇兵のリーダーだったオバサンから報酬をもらえた。
城塞を利用してかなりのオークを倒した事が評価され、金貨一枚多く貰う事ができた。
東側は梯子を登れなかったパーティーが全滅、砦内でもハイオークにやられたりで、四百人近く参加した義勇兵で百人もの被害があったようだ。
開拓軍は現地に残り、砦を守護する準備を進めていた。
たった一日だったが、酷く長かったようにも思える。はぐれ組と別れるのは名残惜しいが、義勇兵を続けるうちにまた会うこともあるだろう。
俺は疲れた体を休めようと、いつもの場所へと向かおうとした。
「隊長はん、ナニひとりで帰ろうとしとるん! 祝勝会せなっ」
「は?」
「ちゃんと最後まで盛り上げてください」
レナの影に隠れていたミナまでも、俺に訴えてくる。
「拙者、和食がいいでゴザル」
和食ってなんだよ、そんな店あるなら紹介しろよ。
他の面々も解散する気配はない。
「はぁ、俺の行きつけでいいなら連れてくよ」
ひぐらし亭に近づくと、白くて小さな影が飛び出してきた。拾い上げようと屈んだら、膝を駆け上がり肩口に登って、顔を舐められた。
「ただいまハクコ」
『おそかった、です』
わずか一日だが、出会ってからほぼ一緒にいただけに、寂しかったみたいだ。
「なにそれ、かわいい」
無口だったサナエが、目をキラキラさせながらハクコを見つめる。
ハクコの方はやけに威嚇気味だ。爪を立てて、肩に食い込むのが痛かった。
早いところ落ち着きたくて、店へと入る。
「イタオさん、客連れてきたよ」
「おう、いらっしゃい!」
いつもの声に帰ってきた実感がわいた。
なんか一気にまとめてしまった……
ちゃんとした物語なら、砦の大将格を倒したりするんだろうけど、わき役の物語なのでそんな山場もなく。
……根気が尽きての打ち切り連載デスヨ。
何百話とかける人すげーなと、実感しました。




