ぼっち義勇兵としてのはじまり
なんか世界の説明ばっかりで、面白くないorz
次から物語として読める様に改めて開始する形になるかと……
街を少し歩いてみると、目抜き通りというか大通り沿いにいくつもの商店が並んでいた。
武器屋や防具屋、道具屋に宿屋。もちろん酒場も揃っている。
そんな酒場を覗いてみると、昼間から繁盛している。その客の多くが、腰に剣を下げていたり、槍を隣に置いていたりと武装していた。
あの建物で貰った袋には、十枚の銀貨と三日月が彫り込まれた手形のようなものが入っていた。
そこには「クレセン義勇軍見習い」と彫り込まれている。
ある種の身分証だろう。この銀貨の代償が、その義勇軍への参加ということなのか。
何にせよ、表通りの繁盛店というのは、手持ちの金の価値もあいまいな状況では敷居が高い。
もっと場末のくたびれた感じの店が良いだろう。
俺は表通りを外れて、裏路地へと多行っていった。
大通りから外れると、石造りの建物は一気に減って、木造というか板張りの小屋がほとんどだった。中には布地のテントのようなモノもある。
そんな中に「ひぐらし亭」という、いかにも場末な感じのこじんまりとした店を見つけた。
隙間のある扉から覗くと、カウンター席と四人掛けのテーブルが二つ。客は奥に一人いるだけのようだった。
少し胡散臭さは感じるが、こういう店の方がどこか落ち着ける気がした。
少し勇気を出して、扉を押し開けて中に入ってみる。
「いらっしゃい」
髭を生やした親父が声を掛けてくる。六人ほど並べるカウンターの中央付近、マスターの前の席に座った。
「これで軽い酒と何か食べる物を」
銀貨一枚を置いてみる。
「あんた新兵だね」
「何かそうらしい、知ってることがあったら教えてくれる?」
俺の着ている服は、スーツにスラックス。くたびれたリーマンスタイルで、明らかに街の雰囲気からは浮いている。
「新兵でこの店に来るとは、ひねくれてるのか、あぶれてどうしようもなかったか……」
親父のぼそっとした呟きに、肩をすくめて見せる。
「俺も元は義勇兵だ、あんたの気持ちもわかってる。教えれるだけ、教えてやるよ……見ての通り暇だしな」
そう言って親父は話し始めた。
俺達義勇兵となる者は、この世界とは異なる世界から流れ着いた者らしい。
誰かに召喚されたのか、死んであの世に来ているのか、良くは分かってないらしい。
ただこの世界でも死は訪れるので、死後というよりは神隠しで連れてこられたのかもな。
というのは店のマスター、イタオさんの言葉だ。
そしてこの世界の人間にとって、義勇兵となる者は軽んじられる傾向にあるらしい。
それを踏まえてこの街だ。この世界は人類によって支配されていたが、ある日突然現れた魔王に蹂躙されたらしい。どんどんと国が滅ぼされ、追い立てられて大陸の片隅にまで追いやられた。
ついに人類も終わるかと思われたとき、またも突然魔王がいなくなった。
誰かに倒されたのか、急に死亡したのか、この世界から去ったのか、その真相は分かっていない。
ただ魔物や妖魔はこの世界に残った。かつてのように人類を目の敵にして襲うことはなくなった。しかし大陸の大半はそれら魔物達のものとなっている。
唯一残された人類の王国ヘルムガルドは、失地の回復のために侵攻を開始した。
「その最前線がこの街、レクセンだ。といって百年以上かけて、まだ隣のオークの国にすら攻め込めない状況だがな」
話しながらも用意してくれた焼き魚定食を食べながら、先を促す。
山岳にある王都から、麓にあるこの街へ開拓軍が組織され、ゴブリン達からこの地を奪還。魔物に制圧された街を元に復興が進められるうちに、後の義勇兵となる者達が現れ始めたらしい。
定期的に現れるそれらの記憶を失った人々に、食料を分ける代わりに労働力として使い始めた。
街がある程度復興すると、余った人員は魔物の領地への侵攻に割り振られるようになり、義勇兵と呼ばれるようになったという。
「開拓軍にとって、俺達は勝手に沸いてくる兵力。後ろ盾もない奴らだから使い潰せると考えてる節はあるな」
「そんな……」
「この世界に人権なんてないからな。俺達としても、拠り所は必要だから持ちつ持たれつではある」
そう言ってからイタオさんは、一呼吸おいて続ける。
「ただ義勇兵は死にやすい。こんな場末にしか店を開けない俺ですら、成功者な方なんだ」
イタオさん自身、多くの仲間の死を経験してきたようだった。
それからこの街で生きていくための最低限の知識(貨幣価値や施設の利用法など)、義勇兵としてどうすれば稼げるかの手ほどきを受けた。