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三十路から始める異世界生活  作者: 結城明日嘩
ローンガンナー
16/22

借金の理由(ワケ)

主人公の出ない補完話です。

「私だけ悪者なのね」

「お前もそろそろ大丈夫だと思ってるんだろ?」

 汚らしい格好をしたタダナリを追い出したイタオに文句を言うと、そんな風に返された。

「まぁね……」

 タダナリは見事にマコトの仇を討った。しかしそれは明確な目標を失う事になる。

 無理矢理に借金を背負わせる事で、その空白を埋めようとしたのだ。

 1ヶ月がむしゃらに金を稼いで、マコトの死からは立ち直れているとは思う。

「今更、借金を帳消しにしても変でしょう?」

「単に金が欲しいだけだろうが」 

「店長こそボルツさんからいくら貰えたのかしら?」

 イタオは視線を逸らす。

 鍛冶屋のボルツは、タダナリから買い取った権利で、銃の流通を一手に握った。

 義勇兵への普及はしなかったが、開拓軍に数百単位で受注を受けて大繁盛中だ。

 そこでタダナリを紹介してくれた礼として、イタオにそれなりの額を包んだらしい。

 まあ、イタオのそうした強かさがないと、この店はとうに潰れていただろうが。


 ひぐらし亭はイタオが自分の経験から、右も左も分からぬ初心者や、行き場を失った者たちに『その日を暮らしていけいれば、いいじゃないか』という意味で作ったらしい。

 生き急ぎがちな義勇兵に、そのあり方を見つめ直させるような、そんな崇高な志があったようだ。

 今となっては、閑古鳥の鳴く店に、イタオ自身が日暮らし生活になっているようだが……。


 ルカ自身、救われた側なので偉そうな事はいえない。

 タダナリに対する仕打ちも、イタオに対する恩返しの面もあるのだ。

 我ながら素直ではないと自覚しつつも、直す気もなかった。

「今日はタダナリも来ないだろうし、帰るわ」

「おう、またな。お前もそろそろ自分を許して、仲間を探せよ」

「……考えておくわ」


 長らく独りでいたが、タダナリとマコトの何気ないやりとりに、嫉妬や憧れが沸いた事は認めていた。

亡国で帝国サイドの話がうすかったので、

今回はルカサイドの思惑も先に書くことにしました。

不条理な額を請求した意味をつらつらと。

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