借金の理由(ワケ)
主人公の出ない補完話です。
「私だけ悪者なのね」
「お前もそろそろ大丈夫だと思ってるんだろ?」
汚らしい格好をしたタダナリを追い出したイタオに文句を言うと、そんな風に返された。
「まぁね……」
タダナリは見事にマコトの仇を討った。しかしそれは明確な目標を失う事になる。
無理矢理に借金を背負わせる事で、その空白を埋めようとしたのだ。
1ヶ月がむしゃらに金を稼いで、マコトの死からは立ち直れているとは思う。
「今更、借金を帳消しにしても変でしょう?」
「単に金が欲しいだけだろうが」
「店長こそボルツさんからいくら貰えたのかしら?」
イタオは視線を逸らす。
鍛冶屋のボルツは、タダナリから買い取った権利で、銃の流通を一手に握った。
義勇兵への普及はしなかったが、開拓軍に数百単位で受注を受けて大繁盛中だ。
そこでタダナリを紹介してくれた礼として、イタオにそれなりの額を包んだらしい。
まあ、イタオのそうした強かさがないと、この店はとうに潰れていただろうが。
ひぐらし亭はイタオが自分の経験から、右も左も分からぬ初心者や、行き場を失った者たちに『その日を暮らしていけいれば、いいじゃないか』という意味で作ったらしい。
生き急ぎがちな義勇兵に、そのあり方を見つめ直させるような、そんな崇高な志があったようだ。
今となっては、閑古鳥の鳴く店に、イタオ自身が日暮らし生活になっているようだが……。
ルカ自身、救われた側なので偉そうな事はいえない。
タダナリに対する仕打ちも、イタオに対する恩返しの面もあるのだ。
我ながら素直ではないと自覚しつつも、直す気もなかった。
「今日はタダナリも来ないだろうし、帰るわ」
「おう、またな。お前もそろそろ自分を許して、仲間を探せよ」
「……考えておくわ」
長らく独りでいたが、タダナリとマコトの何気ないやりとりに、嫉妬や憧れが沸いた事は認めていた。
亡国で帝国サイドの話がうすかったので、
今回はルカサイドの思惑も先に書くことにしました。
不条理な額を請求した意味をつらつらと。




