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三十路から始める異世界生活  作者: 結城明日嘩
ローンガンナー
15/22

枯れ森は紫でした

 俺は枯れ森へとやってきた。紫のモヤに包まれた森は、明らかに毒々しい。

 今度はちゃんとルカに話を聞いて、準備は行っていた。

 浄化のバンダナというある程度の毒素を中和してくれる布で、口元を覆って毒素を吸わないようにする。

 立ち枯れした木々が立ち並び、その木々には色とりどりのキノコが生えていた。

(どれもヤバい色してないか?)

 蛍光色や鮮血のような赤、紫や青。様々な色に、目がチカチカしてくる。

 また足下はぬかるんでいて、湿気が高く、汗がどんどん出てきて気持ち悪い。

(早いところ片付けたいな)

 俺は既に帰りたくなりながらも、探索を開始した。


 狩人ギルドで習ったサバイバル術の一つに、薬草に関する知識もあったのだが、ここにあるキノコの大半は知らない物だった。

 ひとまずどこにどんなのがあるかだけを、記憶しながら進んでいく。

 採取中にオークに出会うと、面倒になるからだ。

 足下が湿地のようになっているので、足跡は残っている。人よりも大きく、深く残っているのがオークのものだろう。

 俺はそれをたどりながら歩いて、ようやく一体のオークを見つけた。

 足跡から近くに仲間がいないことは確認済み。

 後は一撃で倒せるかどうかだが……。

 オークは警戒する様子もなく、腰を屈めてキノコを採取している。

 明るい茶色のキクラゲを思わせるキノコは、オークの手の平よりも大きかった。

(あの体型を維持できるんだから、栄養はありそうだな)

 銃を構えて一呼吸、『急所狙い』で淡くマーキングが見える場所をめがけてトリガーを引いた。

 ただ弾が発射される瞬間、オークが微妙に体をひねった。

 こちらに気付いたわけではなく、偶然の動作だろうが狙いは逸れて、肩を抉るに止まった。

 ゴブリンならそれだけで吹き飛ぶが、オークは僅かに身じろぎしただけで、こちらへと向き直った。

 オークは手にした籠で顔を庇いながら、腰に差してた斧を抜いて走り出した。

 重量感のある体をゆさゆさとさせながら、結構な勢いで向かってくる。

 1ヶ月の間に体で覚えたリロードを行い、顔を庇う籠を撃ち抜く。

 派手に弾けて中のキノコが飛び散ったが、オークのスピードは緩まない。

 接近までに撃てて一、二発。

 下手に連射するよりも、しっかりと狙って撃つことにする。

 穴の開いた籠越しに睨みつけてくる瞳に、突き刺さる俺の放った銃弾。

 しかし、オークは止まらず突っ込んできた。

(マジかよ!?)

 俺は慌てて横に転がりながら回避する。オークはそのまま俺の側を通り抜け、倒れ込んだ。

 そのまま起きあがる事がないのを確認して、ようやく一息つけた。


 最後の銃弾を受けた時点で死んではいたのだろうが、腰の据わった電車道のような突進は、銃弾の威力にも止まらなかったのだ。

(いくら倒せても、あの巨体に潰されたらヤバいぞ)

 そう思いながら冷や汗を拭う。

 そして自分の現状を確認。

 形振り構わず転がって避けたため、湿地の泥まみれになっていた。

(なんなんだよ……)

 ゴブリンを相手にしてた時とは、勝手が違いすぎる。

(ちゃんと稼げるんだろうなぁ)


 オークの死体を漁って、その首飾りをはずす。獣の牙や爪で作られたそれは、素材として売ることができるそうだ。

 持ってた斧は、錆が浮いててあまり価値はなさそうだ。何より重くてかさばる。

 あとは腰の袋から、黒くて丸い塊がでてきた。携帯食のようだが、とても口にしようとは思えない。

 あたりに散らばったキノコは拾って袋に詰める。一応、イタオさんの依頼もこなさないといけない……何か、自分の首を絞めてる気がしないでもないのだが。


 それから近くのキノコや、再び見つけたオークを倒しつつ、その日の探索を終えた。


 街に帰って首飾りを鑑定してもらうとだいたい銀貨三枚。付けられている牙や爪によって値段が代わるらしい。

 全部で四つ手に入れていたので、全部で銀貨12枚。効率よくオークだけを狙えば、ゴブリンよりは稼げそうだ。

 俺はそのままひぐらし亭を訪れる。採取したキノコも買いとって貰うためだ。

「おぅ……とりあえず、店の外にでようか」

 入ってくる俺を見るなり、店外へと押し出された。

 乾いたとはいえ、全身が土にまみれているから仕方ない。

 手当たり次第に集めてきたキノコ袋を受け取ると、金貨一枚渡された。

「え!? こんなに?」

「ルカには内緒だぞ、ちょっとずつ上乗せして返済に充てろ」

「そんなっ、悪いですよ」

「マコトの件に関しては、お前に無茶して欲しく無かったから厳しく言ったが、感謝はしてるんだ。

 警邏に任せてたら、もっと時間もかかっただろうしな」

「いや、あれは俺が勝手に……」

「俺も勝手に感謝してるたけだ、気にすんな」

 それだけ言って俺の肩をポンポンと叩くと、店内に戻っていった。

 俺も続いて入ろうとした。

「手前、その格好でウチの店入ったら、清掃料とるからなっ」

 再び追い出された。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 雰囲気とか? [気になる点] サブの銃、または多連装(筒(銃身)を増やす) 弾の改良でも良いけど、高位には威力が足りないのは既に出ている情報だし。 [一言] 何で死んでしまうん?
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