表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
護衛役は女の子っ!  作者: 春日陽一
いつかのための“着火剤”
88/102

第86話 お願い

差し込む暖かな光。

お日様の匂いと、花の香りに包まれた箱庭。

白い壁を草木が我さきにと生い茂るそこには、幸せそうなイメージが浮かぶ。

しかし、彼女の記憶の中はその一枚のイメージしかない。

今、絶え間なくなだれ込んできた記憶は・・・・・・声のみ。


『おねぇさまっ!』

  『いい?今日はあなたの将来の旦那様に会いにゆくのよ?』

    『あぁ、“天使のように可愛い”我が娘よ、私が守ってやるからな』


『まぁ、また庭で遊んでいるわ』

  『あの姉弟は本当に仲のよろしいことで』

    『えぇ、まるで“天使”のよう』


『どこに、赤い髪をした“天使”がいると言うんだ』

  『忌々しい“紅”め』

    『私の可能性を全て摘み取った“紅”め』


『お母様もお父様も居なくなってしまわれたわ』

  『怖いよう、ねぇさま』

    『大丈夫。大丈夫よ・・・・・・私が何とかしてあげるから』


『・・・・・・どうしてっ。ねぇ、どうしてっ!!』

  『誰もいないの、私、一人ぼっちなの』

    『まだ、あの方だけが・・・・・・あの方だけがいらっしゃるわっ』

                                    『会いにいかなくちゃ―――』



          『わたちのなまえはアンジェリーナ、アンジェってよんでねぇ』






 はぁっ     はぁっ

     はぁっ     はぁっ

「あ・・・・・・私・・・・・・っ」

はっきり言ってまずいと思った。

今、アンジェは完全に自分の記憶で錯乱してしまっている。

苦痛にも見えるアンジェの顔。乱れる呼吸。

彼女の紅い瞳からは絶え間なく涙が零れ落ち、困惑するあまり現実との境目が見えてない。

彼女の様子がサキの言葉で急変した・・・・・・それは誰の目から見ても確かなものであった。

そう、彼もまたそれに気が付いていて―――


「あっ、なんだよ。

アンタ、やっぱりアンジェリーナ姫であってんじゃん。

はぁー、いきなり“ラウル”とか紛らわしいこと言ってんじゃねー、よっ」

イザラはそう言うと、今まで動かさなかった左手を急に動かし・・・・・・・そして、何の躊躇わず、自分の喉へと向けられている刃先を掴む。

そして、自分の手が血まみれになるにも関わらずそれをアンジェの手から一気に引っこ抜いた。

「あっ」

吐息の中から小さな声が上がった。

しかし、もう遅い。もう何もかもが遅い。

力が抜けきった手から剣がスルリと、いとも簡単に抜けてゆく。

アンジェから奪った剣。

彼はそれも必要がないかのように、高く放り投げた。


カラン カラン


甲高く響く音。本日にして、何度めかわからない聞きなれた音。

意識が朦朧とする中、アンジェの耳に入ってくる二つの声。

『私はアンジェリーナ・・・・・・あのね、お父様・・・・・・会いに行かなくちゃ、行かなくちゃ、いかなくちゃ、いかなくちゃ、イカナクチャ、イカナクチャ・・・・・・・』

「おいおい、さっきまでの威勢はどこに行ったんだ?」

急になだれ込んできた記憶の数々は、アンジェの脳の中で整理されきれずに、現実の音とすべて入り乱れてしまっている。

困惑するアンジェに、もはやイザラの声・・・・・・イザラの存在は無しに等しかった。


彼女はふと、背中に衝撃を受けて気がつく。


形勢逆転。

すっかり戦闘放棄状態になったアンジェは、簡単にイザラに組み伏され今では冷たい床にイザラに抑えつけられながら寝そべっている姿勢。


次に第二の衝撃。

これはかなり痛かった。

「う``っ」

お腹に意識が遠のくぐらいの衝撃。

痛かったおかげともいうべきか。

一瞬、頭の中が真っ白になり、声も何も聞こえなくなる。

そして、薄れゆく意識の中、現実が少し、垣間見えた。




「・・・・・・サキっ」




あぁ愛おしい、我が弟よ―――




「アージスさまっ!!」




私はやっとサキを助けることが出来るのね。


お願い、

アージスさま。


私と、私の弟・・・・・・・



カナリア国を助けてください―――








こんにちは。

何だか、かなり字数がボリュームダウンしちゃいました。

あと、今回の話は携帯で読むと、もしかしたら読みにくいかも・・・・・・。


すみません。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
苺なんて、嫌いだー!!←作者のブログです。遊びに来ていただけると、春日は喜びまくります!!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ