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護衛役は女の子っ!  作者: 春日陽一
いつかのための“着火剤”
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第62話 はい、師匠!!

王宮の中のある雑木林。

そこでは、先ほどまで聞こえていた鉄と鉄のぶつかり合う真剣の音とは打って変わり、今は練習用の剣、木と木の鈍い音が響いていた。

「うん、上手だよ、サキ。

でも、もう少しだけ腰を引き締めて!!」

「はいっ、ラウル師匠」

あれから数分たっただけで、すっかりラウルを尊敬しきったサキ。

余程、剣術に興味があったのか、その顔はイキイキとしており、上達も早かった。

アンジェも、元々は己の稽古のためにここに来たわけであったが、人に教えることは自分の力の上達に繋がるし、何より楽しい。


「ふぅー、ちょっと、休憩にしようか」

「はい、師匠!!」

ふと、アンジェはサキに“師匠”と呼ばれていることに気づき、少し照れる。

「えっと、サキ。

“師匠”って呼ぶの・・・・・・止めてくれないかな?

あと、敬語も止めてもらえるとうれしい、かも」

自分が“師匠”と呼ばれるのが、どこかくすぐったいアンジェ。

そう呼ばれても、自分にはピンッと来ないし、何より自分はまだまだと思っているアンジェとしては、サキに“師匠”と呼ばれるのは、まだ早い気がした。

「・・・・・・わかり、わかったよ。

じ、じゃあ、ラウル?」

どこか残念そうに、少し戸惑いながらラウルの名前を呼ぶサキ。

そんなサキに満面の笑みを浮かべるアンジェ。

「うん、それ、それ」

「えへへ」と二人で笑い合う。

初めて二人が会った時から考えると信じられない光景である。

きっとサキは、今、笑うまでのここ数日、子供ながらも気を張って来たに違いない。

(きっと、今のサキが、本来のサキなんだ)

子供らしく、好きなことに熱中し、かっこいいと思った人に尊敬する。

そんなサキを見て、アンジェはそう思った。


「そういえば、ラウル。

ラウルは何で、こんな人気のない所に来たの?」

サキが辺りを少し見回しながら聞く。

「いや、ちょっと、軽く剣で素振りでもしよっかな〜って、思ってね」

「えっ、じゃあ俺、ラウルの稽古の邪魔したんじゃ・・・・・・ごめん」

申し訳なさそうに下にうつ向くサキ。

そんなサキに「いや、いや!!」とアンジェが慌てて言う。

「違うよ、サキ、僕は邪魔されたなんて思ってない。

それどころか、ただの素振りをするよりも、サキと稽古する方がいい稽古になってよかったよ。

それに、もともとは剣の稽古のためにここに来たんじゃないんだ」

そう言ってから、アンジェは思いだす。

余りにサキとの稽古が楽しすぎて忘れていたが、アンジェは悩んでいたのだった。

「実は、ちょっと、悩みごとがあって・・・・・・ねぇ、サキ。

もしも、自分の絶対バレチャいけない秘密がある人に知られちゃって、しかも、その人がその秘密を使って、自分の大切な人の立場を危なくさせてしまいそうなんだけど、そのことを自分の大切な人に言うのを躊躇う自分がいる。

そんな時、サキならどうする?」

アンジェはサキに答えを求めようとした。

サキに答えを求めるのは無茶なことなのかも知れないが、サキなら素直に、直球に答えを出してくれるかもしれないとアンジェは思ったのだ。

「うーん。

もし、俺だったら、すぐにその大切な人に謝って、事情を説明して、そっからのことを考える。

その大事な人へかかる迷惑が大きければ、大きいほど、ある人よりも先に行動すると思う」

サキがそう答えた。

(なるほど!)

そのサキの答えを聞いて、アンジェは納得した。

サキの答えが、アンジェの悩みを解決の方向へと向けてくれるものだと思った。

そう思うと、今度は居ても立っても居られなくなってきた。

(早く、アージスのとこに行かなきゃっ)

「ごめん、サキ。

僕、今から行かないといけないとこがあるんだ。

稽古の続き、明日でもいいかな?」

自然と早口になってしまうアンジェ。

そんなアンジェを見て、しょうがないなという風に笑いながらサキが言う。

「うん、いいよ。

じゃ、明日もここでよろしくお願いします」

サキはぺこっと礼儀よくお辞儀をした。


サキの言葉を聞き終わると同時に、アンジェの足は走っていた。

この足が向かう先は一つしかない。


そう、王の書斎アージスのもとだけだ。




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