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護衛役は女の子っ!  作者: 春日陽一
いつかのための“着火剤”
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第61話 わかった。

剣を引きずりながらも斬りかかりにきたサキ。

キンッ

アンジェは咄嗟に抜いた短剣でそれを受け止める。

(やっぱり、これで戦うのは無理か?)

そう思いながらも相手の剣の根元から力いっぱいはじき返してみる。

「おわっ」

はじき返された衝動によりサキは後ろに倒れそうになる。

サキが態勢を整えなおす前にどうするか考えよう。

そう思っていたアンジェ。

だが、そんなことを考えなくても良いみたいだ。


「へっ!?」


何と、サキはアンジェに剣をはじき返された後、そのまま、剣の重さを支えることが出来ずに後ろに倒れてしまった。

「くそっ。

まだまだ・・・・・・。」

アンジェが呆けるなか、当のサキはもう一度アンジェに斬りかかろうと手放してしまった剣を地面から持ち上げようとする。

しかし、上手くは持ち上がらず、結果、引きずり、地面の草を荒らす。

そのサキの一連の動作を呆けながらも見ていたアンジェは一つ、確信する。

(この子、剣術をまともに習ったこと、もしかしてないんじゃ・・・・・・)

きっと、アーリア国の近衛隊員というのも名ばかりだろう。

そんなことをアンジェは考えているとはつゆ知らず、サキは何とか態勢を整え、もう一度、アンジェに襲いかかろうと構えている。

だが、もし、アンジェの推測通りならば、実際に剣を使って戦うのは今回が初めてなのだろう。

実剣が重たいのか、それとも怖いのか、どちらかは知らないが手が震えているし、構えも腰が引けてしまっている。

「たぁぁぁぁぁっ!!」

それでもサキは震える足を奮い立たせ、アンジェに向かってくる。

(無理だ。)

アンジェはそう思った。

サキの勇気を振り絞って向かってくる威勢は褒めよう。

しかし、アンジェは戦意喪失していた。

もう、決着が見えてしまっている。

アンジェは一気にサキに向かって走ると、サキの持つ剣の柄の部分に自分の短剣を押し当て、そのままの勢いではじく。

サキはその力に耐えきれず、剣を再び手放してしまう。

今度は、手の届かない場所へと弾き飛ばされた剣。

唖然とするサキ。

アンジェはそんなサキの足元を崩し、サキの体を地面に叩きつける。


「ウゥッ」


少々、素人にやり過ぎた感はあったが、これでサキも戦意喪失したであろう。

もう、アンジェには敵わないと。

「くそっ、くそっ、くそっ!!

負けた、俺が負けた。

俺はイザラ様の近衛隊員なのに・・・・・・」

くやしそうにするサキ。

そんなサキを上から見下ろしたアンジェは言う。


「ねぇ、少年。

いや、サキ。

サキは強くなりたいの?」


どこかいつもと違って、真面目にサキに問うアンジェ。

そんなアンジェに当然だという風にサキは答える。

「当り前だっ!!

俺は、強くなりたい。

俺が強くなきゃ、イザラ様を守れないっ!!」

子供の、子供だからこその純粋な思い。

今になって、イザラ王子のことは関係ないようだ。

でも、アンジェもそれは同じだった。



「わかった。

サキ、わた・・・・・・じゃなかった、僕がサキを強くしたあげる!」


アンジェは心の底からそう思って言った。

サキの、恐怖にも負けない、誰かのための勇気を見て、そう思ったのである。




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