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護衛役は女の子っ!  作者: 春日陽一
いつかのための“着火剤”
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第55話 あれー?

ウィリアムから「探せ」と言われたもの。

それは、モップでも毛糸玉でもなくて、鳥とサキの髪の毛だった。


(これまた奇妙な探し物だ)


そう思いながらもアンジェは探す。

窓からの日光が射す以外、何も明かりのついていない薄暗い部屋で探す。

鳥の方はすぐに見つかった。

部屋の真ん中に大きな鳥かごに入った鳩を見つけた。

しかし、サキの髪の毛を探すのは少々手こずった。

はじめ、アンジェは髪の毛ぐらい風呂や寝床なんかに落ちているだろうと思っていたのだが、そこには全然、全く落ちてなかったのだ。

「あれー?」

そう言いながら、辺りを見回す。

風呂場には水滴がついていたし、ベッドのシーツは乱れている。

別に風呂や寝床が使われていないわけではなさそうだ。

少し悩みながらもアンジェは探す。

探して、探して、探して。

そして、脱ぎ散らかされていた衣類についていた一本の髪をようやく発見した。

「やっ、やっと、見つけた。

って、あれ?」

ようやく見つけ出したサキの髪の毛一本。

それをちょうど窓からさしていたお昼の日光が照らした時だった。

その一本の髪の毛がアンジェと同じ赤色だと気づいたのは。

アンジェはその瞬間、ちょっとうれしくなった。

今まで、同じ髪の色の人にあったことがないからだ。

だが、その後すぐに疑問が浮かんだ。

「あれ、でも、私の記憶が正しかったら・・・・・・あの子の髪の色ってこんな色じゃなかったよね?」

そう、アンジェの記憶が正しくても、正しくなくても、サキの髪の色はアンジェのように深い赤色ではなく、明るいベージュ色であった。

(じゃあ、この髪の毛は誰の髪の毛?)

アンジェはそう思いながらも、これ以外に髪の毛を発見できなかったため、一応、ウィリアムに見せることにした。




「うん、よくやったね」

ウィリアムはアンジェが探し出してきた、「鳥がいる」という情報と髪の毛一本を確認すると、そう無表情のままにアンジェに言っただけだった。

そしてそのまま呆然とするアンジェを置いてスタスタとロゼッタとどっかに行ってしまおうとする。

「へっ、ちょっ、ちょっと待ってっ!!」

アンジェは急いで、行ってしまおうとするウィリアムの裾を引っ張って止める。

それに気がついたウィリアムは少し怪訝そうな顔をしながら振り向いて、聞く。

「何かな、姫?

今日はもう姫には用はないのだけれど」

散々、人の一日をメチャクチャにしておいての最後の言葉に少しアンジェはムカッとしながらも、ウィリアムに質問する。

「なんで、サキの髪の色は赤ではないのに、それでいいの?」

アンジェは説明した。

ウィリアムに赤色の髪しか落ちていなかった、と。

それはどう見てもサキの明るいベージュとはかけ離れている色なのに、ウィリアムはそれでいいのだと言ったのだ。

(何故それでいいのか?)

アンジェは心の中にある疑問の答えが欲しかった。

しかし、ウィリアムはその答えを言わずに去ってしまおうとした。

現に今だって、アンジェの問いに答えようとはしない。

代わりに、ウィリアムは微笑みながらアンジェに言った。



「姫は、まだ知らない方がいい。

自分の過去もよく知らない姫は」



そう言っただけ。

そう言ってから、ウィリアムはロゼッタとともにどこかへ行ってしまった。




「何で、それを知ってるの」


ぽつんと突っ立ったままのアンジェの声が静かな廊下にちょっとだけ響いた。




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