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護衛役は女の子っ!  作者: 春日陽一
いつかのための“着火剤”
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第49話 だけど・・・・・・

「やっぱり、俺の勘通りお前は女だったんだな」


そう言ったウィリアムを見るのが怖かった。

目の前にチラついて見える自分の真っ赤な髪を直視するのが怖かった。


あぁ、何てことだ。


ただただそう思うだけで、現実を受け入れるのに、現実を理解するのにアンジェはどれくらい時間を費やしたことだろう。

やっと、自分が女だってことを敵国の王子ウィリアムに知られたのだと理解した時、何故かアンジェは泣いていた。

声を上げずに、直立不動で、呆然と泣いていた。


アンジェがいきなり泣き始めたので、ウィリアムは少し焦った。

「お、おい、お前泣いて・・・・・・」

そして数歩下がる。

「あー、くそっ。

何で黙って泣くかなー」

そう言いながら頭をかくウィリアムはどうやら何も言わずに泣くアンジェに戸惑っているようだ。

しかしアンジェはそんなウィリアムの存在さえも頭になかった。


「どうしよう」


ただそれだけが頭の中を駆け巡る。

女とばれてしまった以上、もうアージスの隣で働けない。

アージスもアンジェを女と知ってて、男の騎士として働かせていたと陰口を叩かれてしまうだろう。

しかも敵国の王子にばれてしまったのだから、もしかしたら国事態に迷惑をかけてしまうかもしれない。

そう思うとアンジェの心は申し訳なさでいっぱいになった。


「だけど・・・・・・」


ポツリと小さく声に出た。

自分の声が耳に聞こえた。

聞こえた瞬間からアンジェの心の声が口から叫び声として漏れてくる。

「だけど・・・・・・だけどっ、わ、私は離れたくないっ!!

ここから離れたくないっ!!

まだまだ、働きたくて・・・・・・まだまだ、みんなと一緒にいたいっ!!

私は、みんなと一緒にどんなことも乗り越えていきたいんだっ!!!!」


アンジェはそこまで言い切ると、パッとウィリアムの方に真剣な顔つきで向く。

その時にはアンジェの瞳から涙は流れ出ていなかった。

つかつかと黙って立っているウィリアムの前に行く。


パシッ


そして勢いよく、ウィリアムが持っていた布を取り返す。

「私、負けません。

あなたがもし、私を脅しに来ても、私、負けませんっ!!」

ウィリアムの目を見て、ハッキリと宣言するアンジェ。

ウィリアムもまた、そんなアンジェの真剣な瞳をまっすぐ見ていた。

宣言したアンジェはそのままの勢いで部屋の出口に行き、「失礼しますっ」と言うとバンッと大きな音を立てて部屋から出て行った。






「ウィリアム様の予想通りでございましたね」

アンジェが出て行った直後の部屋。

ウィリアムしかいないはずの部屋に何故か今はロゼッタがいる。

どうやら初めからこの部屋に忍んでいたようだ。

「だろっ、俺の予想通り。

でも、泣かれるのとあんな目で宣戦布告されるのは予想外」

そう言いながら、その場にあぐらをかき座り込むウィリアム。

そんなウィリアムを見ながらロゼッタが言う。

「ウィリアム様。

もうここには貴方様と私しかいません。

本来のウィリアム様に戻っていただいてかまいませんのでは?」

そう言われて気づいたかのようにウィリアムはあぐらをとく。

「あぁそうだね。

どうやら俺は、いや、僕はこちらの方に慣れてしまったようだよ」

そう言ったウィリアムはグータラ王子と呼ばれるのが可笑しいくらいの柔らかな物腰で椅子に座りなおす。

それを確認し、ロゼッタは話を戻す。

「彼女の髪の色は赤色でございました。

とすると、ウィリアム様の第二の予想も当たっておられましたか?」

無表情で首を傾げるロゼッタ。

そんなロゼッタにウィリアムは柔らかく微笑みながら言う。


「もちろん、当たっていたよ。

彼女は・・・・・・彼女はカナリア国第十七女王になるはずであったアンジェリーナ姫だ」






それは、アンジェの思っていた以上の混乱を招く小さな機密事項であった。







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苺なんて、嫌いだー!!←作者のブログです。遊びに来ていただけると、春日は喜びまくります!!
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