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護衛役は女の子っ!  作者: 春日陽一
いつかのための“着火剤”
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第48話 うっうっ、負けないもん!!

パタパター。

遠くの空で鳥が飛んでいる。

それは王宮の窓からも見えている。

「何の鳥だろう?」

そう思いながら肩肘を付き、窓から空をボーと見上げていたアンジェ。

アンジェは現在、ウィリアムの部屋にいた。

それもこれもアージスの腹いせにされたことだ。

「もうっ、マリアちゃんがアージスをからかうから!」

そう思いながら、アンジェはチラッと後ろを見る。


後ろを振り向くと・・・・・・



何故か別世界が広がっていた。

色に例えるなら、こっち(アンジェ側)がブルーで、あっち(後ろ側)がピンク。


別世界の中心には床に絨毯をひいただけの所に座っているウィリアムがいる。

そして、その周りにはたくさんの女の子達・・・・・・。

ウィリアムが好きな女の子に言わせると、「あのダラケタ態度が、母性本能をくすぐるのよね〜・・・・・・」、だそうだ。

まぁ、アンジェには到底理解できない理由だが。


ウィリアムがいる場所と比べて、アンジェは部屋の隅っこの小さな窓のそばに立っていた。

もともとアンジェはあまりウィリアムと関わりたくないことから現在の位置にいるのだが、ウィリアムも全然全くアンジェを相手にしてないので、アンジェとしては嬉しい反面、女としてちょっぴり悲しかった。


「うっうっ、負けないもん!!」(←何に?)


「にしても、監視ってヒマだなー」

そう思いながら、アンジェがジーとウィリアムを見ていると、何人かのメイドの女の子がアンジェの存在に気づいた。

気づいたと思ったら、次の瞬間、気づいた子のうちの一人がアンジェに聞えよがしに言ってきた。


「あーあ、うちの王様もウィリアム様みたいにちゃんと女が好きな方だったらよかったのに・・・・・・はぁー」

悲しそうに大きくため息をつく。

それを聞いた周りの女の子たちがその子が言いたいことを理解し、騒ぎ始める。

「あー、例の事ね」

「あのアージス様と第一騎士の方のこと?」

「そう、それそれ!!」

キャッキャ、キャッキャ。

女の子が騒ぎ始めると、ウィリアムもその話題が気になり始めたようだ。

「なんのこと?」

そう聞いてきたウィリアムを見て、言いだしっぺの女の子が困ったような顔をし、もったいぶりながら甘ったるい声で答える。

「えー、この事をウィリアム様に言っていいのかな〜?

ねぇ、ラウル様?」

最後の言葉とともに女の子がアンジェの方に顔を向ける。


クルッ


向けた瞬間、その後に続くように全員がアンジェの方に向く。

そしてまたもや騒ぎ始める。

「えーうそー!?」

「ラウル様いたの!?」

「っていうか、何でウィリアム様の部屋にいるの?」

「もしかして・・・・・・」

キャー///

女子の暴走は止まらない。

収拾のつかなくなった女の子達はみんなアンジェに興味津津。

あのアンジェを存在に興味の無さそうだったウィリアムでさえ、今は興味津津である様子だ。


「あ、あの、えーと・・・・・・」

アンジェは戸惑う。

「えと、そのことは誤解なんですけど・・・・・・」

アンジェがそう言ってもみんなは聞かない、聞く耳を持たない。

まだまだ女子の暴走は止まりそうになさそうだ。

心なしか女子との距離も縮まっているようにも思える。

アンジェが戸惑っている間にも誰かがウィリアムに事情を話す。


「ほ、本当にどうしよう(泣)」

アンジェがそう思った時だった。


「あら、大変。

もうこんな時間!!」

一人の少女が部屋の中にあった時計を見て声を上げた。

それを聞いた他の女の子達も時計を見て「大変大変」と言いだし、帰っていく。

どうやら休憩時間が終了のようだ。

「それでは失礼いたします、ウィリアム様」


パタン


そうして女の子達は一人残らず仕事場へと帰って行き、部屋の中はあらしが過ぎ去った後のような静けさになった。

ウィリアムもちょっと間は寂しそうに女の子達が出て行ったドアを眺めていたが、今は床の上にだらしなく寝ころんでいる。

アンジェも「ホッ」とし、ウィリアムも何も喋りかけてきたりしないので、また窓の外をボーと眺めていた。


静かに時間が流れた。

アンジェにとってこんなにもゆっくりと王宮内で過ごせたのは初めてかもしれない。

それぐらいゆったりと時間が流れた。




「なー、そこの人」

結構時間が過ぎた時。

急にウィリアムが声をかけてきた。

アンジェは少しビックリしたが、落ち着いた態度でウィリアムの方に振り向く。

「何でございましょうか、ウィリアム様」

「いや、あのさー、俺ずっと思ってたんだけどさー」

そう言いながらウィリアムはゆっくりと立ち上がり、徐に近づいてきた。

「はぁー、何でございましょう?」

近づいてくるウィリアムに首をかしげながらアンジェは再度問う。

しかし、ウィリアムは返事をせず「あのさー」と曖昧の言葉を並べて、二人の間に人一人分ぐらいの距離になってもなお近づいてくる。


「うわっ、これ何か近すぎるんじゃあ!?」

アンジェが混乱しながらそう思った時には、アンジェは後ろに追いやられ、背中が窓にピッタリとくっついていて、ウィリアムが壁に手をついている状態、もう少しで二人の体が密着しそうな距離にまでウィリアムは近づいた。

「あ、あの、ウィリアム様!?」

アンジェが慌てながらも、今いる場所から逃げ出そうとする。

しかし、そんなアンジェを通すまいとどんどんウィリアムはアンジェとの隙間を埋めていく。

そして、話し続ける。

「そんでさー、これは俺の勘なんだけど」

そう言いながらウィリアムは混乱しているアンジェの頭に手を伸ばした。


「ハッ、しまった!!」


アンジェがそう思った時には、すでに遅く、アンジェが髪を隠している布をウィリアムが勢いよくとる。


バサッ


布がとられた瞬間、隠していたアンジェの長い深紅の髪が露わになる。

真っ赤な林檎のような髪が。


その赤い髪を少し指に絡め、ウィリアムは呆然とするアンジェに向かって言った。


「やっぱり、俺の勘通りお前は女だったんだな」




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