第45話 そりゃそうか・・・・・・
机の上に紙とインクを用意し、ペンを持ったハルが椅子に座る。
それを確認してからアージスが話始める。
「えー、それじゃあ始めるとするか。
まず、ウィリアム王子との会談内容についてだが・・・・・・」
アージスはウィリアムに「素でしゃべってくれ」と言われたことをまず言った。
「それは完全になめられてるね」
ペンを走らせていたハルが言う。
「もし、アージスがそれを承諾して、それを公の場でしたら今後のアーリア国との戦いにも支障をきたすだろうな」
ジルも言う。
「あぁ、多分それが相手の狙いだろう」
そして、アージスが言う。
アンジェはその会話を黙って聞いていた。
政がらみの話は自分には出来ないと思ったからだ。
しかし、アージス達の会話を聞いていて、ふと思ったことがあった。
そして、それをポツリと言ってみた。
「ウィリアム王子はただ、アージスと友達になりたかっただけという可能性は?」
それは純粋なアンジェだからこそ出来る発想だった。
それを聞いたジルがすぐにそのアンジェの意見を否定する。
「いやいやラウル、それはない、ない」
「まぁ、そうだったら平和なんだろうけど、現実では対立している国の王子だからね」
ジルの意見にハルが賛同するように言葉を付け加える。
「そりゃそうか・・・・・・」
アンジェは思った。
もし、ウィリアム王子がアンジェが思ったようにアージスと友好関係を結びに来たのなら、どれだけ今が平和になるのだろうかと。
王宮の中が余りにも平和でにぎやかなもんだからアンジェ自身時々忘れそうになる、自分は戦争中真っ只中の場所で捨てられていたことを・・・・・・。
捨てられていたアンジェを拾ってくれたのは、その時は若かったため兵として借り出されていたハルデン伯爵で、そこから育ってくれたのは今のお父さんだった。
自分は偶然発見され、助かった。
でも、命を落とした兵や民間の人々はいる。
いくら今が昔よりもそう頻発に戦争は起きてないといっても、完全にないわけではないのだ。
アンジェは何とも言えない悲しそうな顔でそんなことを考えた。
そんなアンジェに気付いたアージスが一言いう。
「いや、ラウルの言った可能性も低くはないぞ」