第40話 捕まえろっ!!
『素でしゃべってくれ』
そう言ったウィリアムにアージスは長い沈黙の後、言った。
「身分を弁えてもらおうかウィリアム王子」と。
それは“王”と“王子”の違いを見せ付けた瞬間だった。
「「・・・・・・」」
静かに息を飲む。
相手は何を持っているのかわからないし、逃がすわけにもいかない。
「いいか、俺が三数えて合図をするから、そしたらお前は相手を捕まえにかかれよ」
「うんっ、わかった」
アンジェが了解し、アージスが数を数え始める。
「1・・・・・・」
「・・・・・・」
「2・・・・・・」
「・・・・・・」
「3・・・捕まえろっ!!」
「はいっ」
アージスの合図でアンジェは“スパイ”なのかもしれない奴を捕まえにかかった。
相手もアンジェの動きに気づき、この場から逃げ出そうとした。
アンジェは相手を捕まえるにあたって、慎重に行動する。
なんていったって、相手は王のスパイ(仮定)だ。
そんじょそこらの奴ではないないだろうとアンジェもアージスも考えていたからだ。
「相手はそう簡単には捕まえられないだろう」
それがアンジェとアージスの予想だった。
しかし、二人の予想は見事に外れた。
相手はあっけなく捕まったのだ。
だって、慌て過ぎてドアの前で転んでしまったのだから・・・・・・。
「普通、そこで転ぶか?
なんて間抜けな奴なんだ」
そう言って「はぁー」とため息をつくアージス。
そんなアージスの隣で
「今までの緊張感を返せー!!」
とアンジェが叫んでいたのは言うまでもない。