第28話 あー、もう止め止めっ!!
「えっ、うそ〜」
「それがね、本当らしいのよ〜」
今日の王宮は朝から何だか騒がしかった。
おもに女官達が何やらキャー、キャー言っていた。
「新入りが言っていたんだけど・・・・・・」
「うそっ、アージス様とあのラウル様がっ!!」
どうやら噂が出回っているらしい。
しかも、アージスとラウルことアンジェの。
噂の内容はこうだ。
『王であるアージスと王の第一騎士であるラウルが出来てる』
幸い、この噂からもわかるようにアンジェは前の日の格好のままで寝ていたため“女”とばれることはなかった。
この噂の事を当の本人達はもう知っていた。
「はぁ〜、最悪だぁ〜」
「まったくだ。
アンジェ、こんな事になったのは見つかったお前が悪いぞ」
「いやいや、悪いのは部屋の鍵をかけていなかったアージスの方だよ」
今、アンジェ達がいるここはアージスの書斎である。
そしてこの中にいるのはアンジェとアージスとマリアとラドアスの四人だ。
「何だと、俺は昨日酔っているお前をわざわざ運んでやったんだぞっ!」
「うん、それは感謝してる。
でも・・・・・・」
さっきからアンジェとアージスはこんな感じだ。
それを今まで見てきたマリアとラドアスだが、ついに痺れを切らしたマリアが言った。
「あー、もう止め止めっ!!
さっきからどっちが悪いかなんて子供じみたこと。
もう過ぎたことは仕方ないんだから先のことを考えなさいっ!!」
王様であるアージスにも臆すことなく言うマリアの言葉にアンジェとアージスの言い合いをぴたりと止めた。
「そ、それもそうだな」
アージスは少し驚いたようだ。
「そ、そうだね。
何か考えないとね」
アンジェは単純にマリアに「また、起こられるかも」と思っている。
やっと、皆が噂について話し合おう(といっても、もともとマリアとラドアスはそのつもりだったが)としたときだった。
トントンー。
ドアが叩かれた。
それにマリアは
「もぉー、これからやっと本題に入れると思ったのに」
と言っている。
ラドアスも同じようなことを言いたそうな顔をしている。
まぁ、これで話がそれてしまったのは事実なのだが。