第23話 無視って事ですかっ!?
「あ、あのー」
アンジェは恐る恐る少女に声をかけてみた。
「・・・・・・」
しかし、少女からの返答はない。
「聞こえなかったのかな?」
とアンジェは思い、もう一度声をかけてみる事にした。
今度はさっきよりも少女に近づいて。
「あ、あの、わ・・・僕、ラウルって言うの。
よろしくねっ!」
もちろん、ニッコリと自己紹介を忘れずに。
「・・・・・・」
しかし、少女はそれでも反応しない。
「あれ?」
さすがにこれはおかしいと思った。
そういえば、この少女は一度たりともアンジェを見ようともしてない。
「もしや、これは無視?」
アンジェの頭の中で一つ結論が浮かぶ。
しかし、これを否定する。
そして、そんなことを思った自分が許せない。
「まだ、しゃべってもいない人相手に自分は何て失礼なんだっ」
と。
そして、また別の結論が浮かんできた。
「もしかしたら耳が遠いのかもしれない、それとも耳が聞こえないのかも」
と。
これにはすぐにアンジェにも納得出来た。
「そうだ、きっとそうだ」
そう思いながら、アンジェはついに少女の前に乗り出し、めぇいっぱい少女の顔に自分の顔を近づけ、言う。
「あのっ、僕、ラウルっ!
よろしくねっ!!」
もちろん、耳が聞こえない場合ように手を少女の目の前で振りながら。
「・・・・・・!!」
少女はアンジェの行動に驚いた。・・・・・・たぶん。
目をパチクリさせたのは確かだ。
しかし、それはちょっとの間だけで、今度は顔をプィッとそむけアンジェがいる方向と反対方向に座りなおした。
「えっ」
これでアンジェは一つ、確信した。
この少女は耳が聞こえないわけではない。
目も口も多分、鼻も。
どこも悪くないないと思う。
じゃあ、これは・・・・・・
そう、あれしかない・・・・・・
つまり・・・・・・
「無視って事ですかっ!?」
ああ、そういうことだ。