第19話 ついに来たっ
アージスの言葉が言い終わり、パーティーも中盤にさしかかった。
訪問者である貴族達は(昼間っから)酒に酔いしれ、お家自慢が始まっている。
そんな中、アンジェはドキドキ(?)していた、もうすぐあれが始まるのだ。
パン、パン
アージスが本日二度目の手を叩く行為をした。
またもや客達が静まり返りアージスのほうを見た。
「ついに来たっ」
アンジェは思った。
「それでは、本日、二度目のメインに移ろう。
実は昨日、新しく俺の第一騎士としてこいつを就任した」
アンジェはスッとアージスの前に出て、膝をつく。
「こいつの名前はラウルだ」
アージスが<ラウル>と名前を出した瞬間、それがアージスが昔飼っていた犬の名前と知っている者がいるのか、かすかに「クスクスッ」と笑われた。
そんな笑い声が聞こえているだろうアージスはそれを無視し、話を続けた。
「俺は別にここで紹介して終わりたかったのだが、こいつと同じく俺の騎士である第二騎士のジルと第三騎士のハルがどうしてもラウルと決闘したいというので今から決闘を行う。」
その言葉に待ってましたと兵士達が木のさくを持ってきて、あっという間に部屋の真ん中に決闘場を作った。
ハルとジルはさっさとさくの中に入る。
アンジェも嫌々ながら入った。
その時、ジルが
「アージス様、一ついいですか?」
とアージスに言った。
「何だ」
「第一騎士とは王を四六時中守り、どの騎士よりも強くなくてはありません。
そこで、少々卑怯でございますがラウル殿対私とハルでもよろしいでしょうか?」
アンジェはジルの言葉に絶望的だった。
アンジェはこの国で二番目と三番目に強い二人を一度に相手しなければならないのだ。
「どうか、アージスがそれを承諾しませんようにっ!」
アンジェは願った。
しかし、アンジェの願いはアージスには届かずアージスは
「いいだろう」
と承諾してしまった。
これにアンジェは絶望的を通りこし、絶望した。
でもアンジェはこの決闘を負けることはできない。
自分のためにもアージスのためにも。
「はじめっ」
審判であろう一人の兵士の声が響いた。
決闘が始まった。
ワァァァーー
酒で気分が高揚している貴族達は歓声をあげる。
アンジェは腰の剣を抜き、一歩踏み込んだ。