第14話 もしかして・・・・・・髪フェチ?
アンジェとアージスは王宮の廊下を歩いていた。
「ラウルは犬の名前、ラウルは犬の名前、ラウルは犬の名前・・・・・・」
アンジェは何かの呪文のようにさっきから呟いている。
「だから、落ち込むなって言っただろう」
「で、でも、何で急に犬の名前なんか・・・・・・」
アンジェはアージスに聞いた。
「そんなの思い付きだ。
それより、何で犬の名前っていうだけでそんなに嫌がるんだ?」
「・・・・・・」
いつでも、どこでも、何でも素直に答えるアンジェが何故かこの時だけは何も答えず黙った。
これにアージスは疑問に思ったがすぐにその答えがわかった。
「もしかして、お前・・・・・・犬が嫌いなのか?」
どこか笑いを含んだアージスの問いに
「嫌いじゃない、苦手なだけっ!!」
とアンジェは答えた。
「ふーん、そうかそうか」
アンジェの答えにアージスは笑わずにそう答えた。
「こりゃ、おもちゃにされるな」
とアンジェは思った。
「ここだ、ついたぞ」
「わぁー」
そこは、今までアンジェが住んでいた家の部屋の三倍もの広さだった。
まぁ、今までアンジェが使っていた部屋が小さすぎなのだが。
実は今まで、めでたく(?)王の第一騎士になったアンジェの王宮での部屋に向かっていたのだ。
「広ーい」
「そうかぁ?、まぁ、気に入ってくれてるならいいけど」
「うんっ、気に入った」
「そうか、そりゃよかった。
ちなみに横の部屋が俺の部屋だ。
後、そこに置いている(騎士の)制服に着替えてさっきの部屋に来い、もうすぐ夕食の時間だからな。わかったか?」
「うんっ、わかった」
そして、アンジェは服を着替えようとした。
しかし、アージスがいる事を思い出したので、いったん手を止め、アージスが部屋から出るのを待った。
しかし、なかなかアージスは部屋を出ない。
「あのね、アージス」
「何だ、アンジェ」
「私、着替えたいんだけど」
「うん、知ってる」
そうアンジェが切り出したがアージスは部屋から出てくれない。
「私、女なんだけど」
アンジェは今度はこう切り出した。
「知ってる」
しかし、それでもアージスは出てくれない。
もう、これはあれしかないとアンジェは思い、
「アージスにそんな趣味が・・・・・・」
と言った。
「あるわけ無いだろうそんなもん」
「じゃあ、何で?」
「いや、お前の髪、見たことないなって思って」
「もしや・・・・・・髪フェチ?」
「違う、アンジェ、ふざけんな」
アンジェは
「真面目に言ったのに」
と言いながら、髪を隠していたターバンをとった。
「ほぉーぅ」
そこにはアージスも感嘆するようなきれいな真紅の髪が流れるように現れた。
「きれいだな」
「えへへっ」
アージスが素直に褒める、アンジェもそれを素直に受け止める。
アンジェの髪は燃えるような深い赤色でアンジェの腰にまで伸びる長さだった。
ここで、アージスはある疑問に気づいた。
「しかし、スーダ家のご夫婦の髪の色は黒だったような・・・・・・」
そこまで言って、アージスはハッとした。
アンジェが急に悲しげな顔をしたからだ
「す、すまん。
何か悪いことを言ったか」
「ううん、アージスは何も悪くないよ。
実はね、私、スーダ家の実の子じゃないの。
昔、路上で倒れていた私を今のお父さん、お母さんが拾ってくれたらしいんだ」
それを聞いてアージスは申し訳なさそうに
「そうなのか、すまん」
と言った。
「ううん、本当にいいの。
じゃあ、私着替えるから」
それを聞いてアージスは
「わかった」
と言って部屋を出た。
「フー、この話しゃべったのマリアちゃん以来だな。
もしかしたら、本当のお父さん、お母さんは私と同じ赤色なのかな」
とアンジェは言いながら、制服を手にとった。