第10話 さー、面接を始めよう
会場に入るとざわめきが起こった。
会場にいるお嬢様方は黄色い声援を送っている。
誰に送っているかというとそれはもちろん・・・・・・
アージスへだ。
「へぇ〜、アージスって結構モテるんだなぁ〜」
アンジェは隣にいるアージスに言った。
「うるさいっ、アンジェ。
あれは俺が王だからのことだ、どうせ、俺自体に惚れているわけではない」
「そっかなぁ〜」
アンジェはもう一度、お嬢様方の方を見る。
「確かにアージスが言う通りの人もいるけど、ほとんどの人が私が思った通りだと思うけどなぁ〜」とアンジェは思い、
「アージスはもしや鈍感?」と思っていると急にさっきまで黙っていたアージスが何か思いついたかのような顔をしながら話してきた。
「そういうお前も結構モテるんだな」
「そういうアージスもうるさいっ。
これはまた、ちがうやつだよ」
実はアンジェも何か見られてた。
何でかはアンジェでもわかるのだが・・・・・・
アンジェ達、三人が会場に設置されている王が座るための椅子に向かうほどある声は、より大きく聞こえてくるようになった。
「おいっ、あいつ、一体誰だ?」
「さー、そういえば、あそこには本来、セーランド殿がいるはずだぞ」
どうやら、アンジェの事を言っているようだ。
「それにしても、王宮だから噂とか流れるの早いと思ってたのにな〜」
そんな、アンジェの独り言にアージスが
「まぁ、さっき決めたことだし、さすがにまだ流れないだろう」
と言いながら椅子に座る。
「ふ〜ん、そんなもんか」
そう言いながらアンジェも隣に立つ。
「今から面接を開始します。
面接を受ける方はいったん、隣の部屋に移動して下さい。
順番にお呼びいたしますので、呼ばれた方はこちらにお越しください」
ラドアスが丁寧に言う、そして、続けて諸注意などを説明し始めた。
アンジェはラドアスが言っている間に見知った顔を見つけた。
「あっ、マリアちゃん」
アンジェはマリアを見つけたのだ。
マリアは
「何で、アンジェがそこにっ」
と言いたいような驚いた顔をしている。
アンジェは(自分が大勢の公衆の前にいる事を忘れて)思わず、マリアに向かって手を振りそうになった。
だが、アージスがジィーと自分のことを見ているのに気づいて、アンジェはハッと思い、手を振りたい気持ちをグッとこらえた。
そしたら、
「なんだ、手を振らないのか」
とアージスが言った。
「だって、振ったら、アージスは笑うんでしょ」
「さーな。
お前はもしかして、ザビル家の長女に手を振るつもりだったのか」
「そうだよ。
私、実はマリアちゃんと幼馴染なの」
「ふーん、そうか。
ということはザビル家の長女もお前が女だって知っているんだな?」
「うんっ、そうだけど・・・・・・
それがどうしたの?」
「いや、別に」
アージスがそう言った瞬間、
「ゴホンッ」
ラドアスの咳払いが聞こえた。
どうやら、話は終わったようだ。
「さて、クソつまんない俺の愛妾を決める面接とやらを始めようか」
アージスがアンジェとラドアスにだけ聞こえるようにそっと言った。