序章
「ーーー正解。」と私は歌うように呟いた。
どうしてこの喜びを抑えきれよう?
探し求めていた「半身」をついに見つけ出せたというのに。
ともすれば全てを投げ出してでもいいと思えるほど、この感情
は大きいというのに。
これまで人生の大半を費やしてきた「半身」探しは、どれも不正解という残念な結果に終わった。それはディテールが違っていたり、外側だけで中身が出来損ないだったり、根本から間違っていたりしたが、だからこそ「半身」を探し当てるヒントになったのだと今ならそう思える。
私はすぐにでも「半身」を抱きしめたくなる衝動を抑えながらも、笑みだけは隠しきれずにその場に立ち尽くしていた。
思えば、あの「はじまり」からどれほどの歳月が流れたのだろうか?
私は「はじまり」となったあの親友の言葉を思い出す。
当時私がまだ自覚していなかった欠落を、恐ろしいほど的確に指摘したあの言葉。あの言葉がなければ私は己の欠落を認識できないまま一生を過ごせたのだろうか?
それとも、同じような出来事を通して結局認識することになったのだろうか?
今さらこんなことを考えても仕方がないと思いながらも、今まで通りに正解のなかった考えを巡らせてしまう。しかしいまだに理解することができなかった正解も(だからこその欠落なのだろうが)「半身」が教えてきれるだろうと結論を出して、「半身」が正解を導くように「策」を巡らす。
私は目的のためならば手段を問わず、法も倫理も捨て去って行動しなければならない。そうでなければ今までのように「半身」を失ってしまうかもしれない。それだけはなんとしてでも阻止してみせる。すべては私が如何に完璧に振る舞えるかが鍵となっているのだ。
あの出来事が「はじまり」であることを疑ったことはないが、不思議なことにこれからの出来事が「終わり」になる。そんな妙な確信があった。
「ーーーさあ、正解を導こう。正解を導く、式を創ろう。」そうして私は動きはじめた。