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第7話 究極の業 上

「おつかれー。いやー最後はすごかったな」


「見事だったぞ。予想をはるかに超えていた。ザインもご苦労、勇者の力を垣間見ることができた」


労いの言葉をかける俺と王子。


「ありがとうございます、王子」


深々と頭を下げた騎士ザインはすでに兜を外していた。大陸最強と呼ばれる人間は30過ぎたくらいの年齢であろうことが見てとれ、その顔は精悍で、赤い色の短髪と合わさり強さが溢れているようにさえも見えた。

ザインは俺を見ると、挨拶をしながらスッと頭を下げた。慌ててどうもどうもと挨拶を返した。

ごめんね、ザインさん。初対面なの忘れてたよorz


「負けちゃったけど、すごく楽しかったよ」


達也も頭の防具は外し、にっこりと笑っていた。

試合は引き分けだったが、一方的な試合だったからな。やはり達也の中では敗北なんだろう。


「うむ、だが魔力をあそこまで使いこなすとは思わなかったぞ」


「さすがは勇者様ですわ」


「これならば近いうちに究極の魔力技術も習得できるかもしれませんな」


先ほどの試合について和気藹々と話しているとザインが満足げに頷きながら呟いた言葉が俺の耳まで届いてきた。


「へぇ、その究極と呼ばれる程になると何ができるようになるんだ?」


思わず聞いてしまった。達也が使った魔法技術ですら、あんな威力だったのにそれが究極とは・・・チートがスーパーチートに進化するな。達也も姉貴も気になるのだろう、ザインを興味深く見つめている。


「まず魔力とは生命の体内から作られるエネルギーのことです。この魔力を精霊に分け与えると、その礼として精霊の持つ力、つまり魔法を使用できます。カナメ殿、ここまではお分かりですかな?」


騎士ザインは俺が魔法の知識についてあまり無いことを知っているのか気にかけるように魔力について説明してくれた。そういえばグロトじいさんやリオン王子も似たような事を言っていたなと思いながら、ザインの言葉に対して頷いた。


「その昔、ドーメントという名の魔法科学者が魔力を精霊に分け与えずに魔法を使用できないか?という研究を行いました。結果はただ魔力が消費されるだけの失敗だったそうです。なぜなら、魔力は精霊を介さずに体外から放出すると散ってしまうからです。実際にやってみましょう」


ザインは篭手を外し、掌を上に向けた。


「確かに手から魔力が出てきているわね」


「うん、そして散っているね。まるで大量の水に色の着いた液体を入れても薄まってしまって色が無くなるような・・・そんな感じだね」


うん、そんなこと言われてもぜんぜん分からない。魔力ってどうやって理解するんだよ・・・


「話を続けましょう。魔力が散ってしまうことに悩むドーメントを尻目に同僚の魔法科学者は単純なことに気づきました。散ってしまうのなら閉じ込めてしまえばいいのではないかと。その考えは当たっており、特殊な容器に魔力を流し込み、すぐさま蓋を閉め、密閉したところ魔力は散らずに維持することが可能となりました。後に魔道具と呼ばれる魔力を宿した道具の原型となる物はこのとき確立されたと言っていいでしょう」


「ただ放出した魔力を容器に入れることが究極の魔力技術なの?」


達也が首をかしげながら質問する。

確かに、究極にしてはずいぶん簡単な気がするな。


「いえ、まさか。ここからが本番です。密閉することで魔力は散らずに維持できましたがドーメントは納得がいきませんでした。よく周りに「魔力を維持しているだけで魔法を使用してる訳では無い」とこぼしていたそうです。ドーメントは人生を賭けて納得のいく魔力の維持を研究し続けました。そしてついに見つけます。それは放出された魔力に渦巻きの方向性を持たせることです」


「渦巻きの方向性?」


今度は姉貴が首を傾げながら聞き返す。ちなみに俺はもう駄目だ。訳わからん。


「はい。この方向性を持たせることにより体外でも魔力は中心へと集めることができます。集めただけではただの魔力の塊ですが、武器を中心に魔力を集めると話は違ってきます。魔力の中心となった武器は強化され、その攻撃は破壊できない物は無いのではないかと思ってしまうほどです。ちなみに大量の魔力を必要とし、習得が恐ろしく困難なため究極の魔力技術と呼ばれることもありますが、ドーメントは精霊を介さないこの魔力技術を魔法では無い魔法、という意味から無属性魔法と名付けました」


ドーメントすごいなー、イイハナシダナー。という事か。


「具体的に説明したいところなのですが、恥ずかしながら私はまだ習得できていないのです。しかし、この無属性魔法を使えるお方がこの場におられます」


3人ともリオン王子に顔を向けるが、王子は苦笑いをしながら手を横に振った。ということは、まさか、と今度はリアラに顔を向ける。


「リアラが使えるの?」


「そうです。えっへん!」


リアラが胸を張りながら肯定する。自分でえっへんって言うとは。でも、ドヤ顔もかわいいぜ・・・


「姫様は1年ほど前にこの技術を極められました。扱いが難しく、発明したドーメント以外に使い手がいないとされてきたこの無属性魔法を使用できる魔術師は現在、姫様のみです」


おお~。ぱちぱちぱち、と歓声と拍手を送る俺たち。


「魔力の渦については説明するよりも見せたほうが早いだろう。リアラ、訓練場の案山子相手に実際に攻撃してくれ」


「はい、お兄様。任せてください」


究極の魔力技術とやらを見ることができるらしい。説明だけでは意味分からなかったから、楽しみだ。

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