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第5話 戦闘準備

「体全体に流れる魔力を掌に集めるイメージじゃ。そして集めた魔力を放出しながら精霊に願いを唱える。『集え水よ! 青きベールとなり傷ついた身を癒したまえ!』、これが水の下級魔術で治癒魔法の1つじゃ。ただ呪文を唱えるのではなく、精霊にお願いするのがポイントじゃの。切り傷や打撲などを癒す効果がある。が、大怪我や病気などに対しては効果が薄い、そのような時は正直気休め程度じゃな」


俺は治癒魔術師のグロトじいさんに腕を診てもらった後に、治癒魔法とやらを教えてもらっていた。だが・・


「いや、まずその体の魔力ってのがわかんねぇよ。俺たちがいた元の世界に魔力とか魔法とか無かったもん」


グロトじいさんの手からぽわぽわと薄い水色の煙のようなものが出ている。感触を確かめようと手を煙の中に入れてみる。何かに触れているのはわかるが煙のように素通りする。感覚としては抵抗の無い水、というのが当てはまるかな。

これが人間の体から出てきているというのはとても不思議だ。


「魔力や魔法が無いとは、想像がつかん世界じゃわい。しかし、共に来た勇者様方はすぐに魔法を使えたと聞いたがのう」


「勇者と一般人を比較しちゃ駄目だろ。わっはっは」


「ほっほ。確かにそうじゃのう。ほっほっほ。まあ、おぬしの魔力は一般人程度には有るようじゃし、気長に練習あるのみじゃな」


そういやリアラが普通は数年から数十年かかるって言ってたな。・・・俺が魔法覚える前に元の世界帰れるんじゃない?いやでも、もしもの時に念のため・・・それに魔法使ってみたいし・・・


「ん?あそこの訓練場に居られるのは勇者様と姫様みたいじゃの。ほれ、あっちじゃ」


魔法について考えているとグロトじいさんが達也たちを見つけたみたいだ。医務室の窓から見える広場のようなところが訓練場なんだろう。グロトじいさんの目線を追うと確かにいた。訓練場の中心で鎧を着ている人と何か話している。


「あ、本当だ。今から訓練でもするのかもな。ちょっと見学してくるわ」


「うむ、体が不調のときはいつでもここに来るが良い。わしはこれでも腕は良い方じゃからな」


「おう、ありがとな、グロトじいさん。また来るぜ」


医務室にはできるだけ来ないに越したことは無いがの、ほっほっほ。というグロトじいさんの言葉に手を振りつつ、訓練場が見学できる場所に行くことにした。


「それでは訓練場を一望できる場所へ移動しましょう」


もちろんメイドさんの案内。訓練場を真正面から見れるテラスのようなお偉いさん専用の場所があるらしい。お偉いさん専用がOKというのだから、どうやら俺の待遇はかなり良いみたいだ。ちょっと嬉しい。

少し移動するとそこに着いた。その場にはリオン王子と護衛の騎士たちがいた。


「カナメか。腕は大丈夫だったか?」


「やあ、王子。原因はわからなかったけど、魔力循環とやらは問題ないみたい。たぶん大丈夫だろうって」


「そうか、しばらく様子を見るしか無いようだな。ところで勇者の訓練を見に来たのか?」


「うん、医務室から見えたから。少し見学に」


広場の中心を見ると白く輝く鎧を着た背の高い騎士が右手に長さ1メートルほどのロングソードを、左手に野球のホームベースのような形をした小型の盾を持ち佇んでいた。

さっき、医務室から見えた達也と何か話していた騎士だな。


「タイミングがいいな。今からタツヤと私の親衛隊から選出した騎士が剣を交える。魔法無しで木製の剣を使った手合わせ程度だが、今現在の勇者の力量を見ておかねばいけないからな」


確かに良く見るとロングソードも盾も木製だ。だが、騎士自身の体の大きさに重厚な鎧や兜が合わさり、佇んでるだけで威圧感がある。


「ああ、そんなに心配しなくてもいいぞ。もちろん部下には手加減するようにと伝えているからな」


顔に出ちゃっていたか。俺が勝手にびびってるだけで達也の心配はまるでしていないんだがな。

まあ、心配してやるとするか。達也は大丈夫かな~。って、アイツどこにも居ないじゃん。


「肝心の達也はどこに行ったんだ?」


「剣を選ぶのに時間がかかっているようだな。む、丁度戻ってきたな。ん?なんだあれは?ただの木の棒にしか見えないが」


達也は1メートル20センチほどの木の棒が握り、笑みを浮かべている。体には脛当てや篭手、胸当などの軽装備を身に付け、顔部分が見えるヘルメットのような兜で頭部を守っていた。

後ろからはリアラと姉貴が付いて来ており、リアラは心配そうにタツヤを見つめているが、姉貴は相手の騎士を見て眉をしかめていた。


「竹刀の代わりかな。達也は元の世界で剣道という武器を使った武術をやっていたんだ。そのときの武器は木製の細く、軽い、殺傷性の無い物で、ちょうど今達也が持っているような形をしているんだ。殺傷性のあるものは日本刀と言い、薄い鋼鉄製で片方に刃が付いていて、斬る、という一点に特化している武器なんだけど」


「なるほど。確かに得物は慣れている物が一番だからな。しかし、その剣の形を鋼鉄製の刃で作っても鎧に弾かれ、最悪折れるだけだ。鎧よりもはるかに硬い魔物を相手にした戦闘では話にならんな。・・ボソッ(だが、勇者ならばあるいは・・いや、そうだとしても、やはり時間が・・)」


王子の言うとおり日本刀の強度が問題だな。戦国時代に発明されたという竹刀は、もともと日本刀を学ぶ際に道場で使われる練習用の武器だ。つまり、達也が慣れている得物で戦闘を行うとすると武器はどうしても日本刀に似ているものに限定されてしまう。

人間ならまだしも、固い鱗や表皮を持った魔物相手には通じないのだろう。それこそ、斬鉄剣が使えるような超達人じゃないと・・・あれ、なんか、達也ならできそうじゃね・・・


リオン王子は治癒魔術師と審判役の騎士が試合を行う2人の近くにいることを確かめると、隣にいる護衛の騎士に始めさせよと命令した。


「さ~て、勇者の力ってのを見せてもらおうかね!」


「それ、私達サイドのセリフじゃないか?」


「それもそだね」


だって俺も結構楽しみなんだもん!


お気に入り登録をしてくださった方々、本当にありがとうございます。

完結目指して頑張るつもりなので、これからもお付き合いよろしくお願いします。

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