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地上最強のオッサン、モチを喉に詰めて死ぬ!  作者: 81MONSTER
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第1話《異世界》



 死神と呼ばれる男がいた。



 齢40にして、地上最強と恐れられている。そんな男が、元旦の朝に死んだ。殺した相手は、雑煮(ぞうに)のなかの(もち)だった。



 器官を塞ぎ、呼吸を奪う。そして、やがて窒息死に至る。鮮やかな手口であった。



 あらゆる猛者(もさ)どもから恐れられていた死神が、餅に遅れをとって死んだのだ。あまりにも、あっけない最期である。



 そして、死神の意識は異世界へと送られる。





   ●




「ここは、何処や?」




 死神と呼ばれた男は、見知らぬ場所で覚醒(めざ)めていた。



 木々に囲まれたその場所は、一切の人の手が加えられてはいなかった。そんな場所に、美しい女がいた。不思議そうに、死神を見ている。




「タナちゃん、目覚めたか?」




 穏和な笑みを浮かべて、死神に抱きついている。柔らかで、温かな感触が生を実感させた。




「ティラちゃん、タナちゃんの(つが)い。忘れたか?」




 微かな記憶が、死神のなかには残っていた。死神として生きてきた記憶。タナトスとして、今いる世界で生きてきた記憶。目の前の女――ティラミスとの記憶。そういったモノが、やんわりとだが、死神――タナトスのなかには残されている。




 皮肉なものであった。



 新たに生を受けた先でも、死神(タナトス)と呼ばれているのだから。




「タナちゃん、お腹すいてるか?」



 そう言って、ティラミスはひし形の食料を差し出してきた。



 それは、餅である。受け取りはしたが、(いや)な記憶が感覚としてこみ上げてきて脂汗が出てくる。



「タナちゃん、お餅が恐いか?」




 そう言って笑うティラミスに、不思議と愛しさが込み上げた。



 気付けばティラミスを、抱きしめていた。



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