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レオン様の助手?


 遅い時間なのでハーブティーの方がいいかも。そう判断して私はカモミールティーを淹れて持って行った。様々な茶葉が厨房に用意されているのは確認済みだ。

 私はお茶を淹れるのにはちょっと自信がある。これも領地に居たときに侍女のアイリスに手ほどきしてもらったからだ。


「「旨い!」」


 気に入ってもらって良かった。——ってなんで私は喜んでいるんだろう。この人たちは本当の私を虐げている人たちなのに。







 次の日、ケイトとコニーと掃除をしているとマルゴットがやってきた。

 私の部屋に食事を運んで行った時の様子を聞きたいのだろうと思い、中に居た人は泣き臥せってましたとかなんとか適当な嘘をでっちあげる。

 その報告を聞いて満足そうに笑みを浮かべた後、レオン様とノア様にお茶を持っていくように言われた。


「レオン様があなたの淹れるお茶を気に入ったようなのだけど、どこでそんな機会があったのかしら?」


 探るような視線を向けてくるので、私は昨晩厨房で会ったことを話した。


「そう。今回はレオン様の希望だから仕方がないけれど、レオン様はあなたとは身分が違うのよ。決して気安く話しかけたりなどしてはいけません。お茶を入れたら余計な話などせずに戻ってきなさい」


 そう言ってマルゴットは去っていった。





 ワゴンに茶葉やカップ、ポット等と厨房で用意してくれたクッキーを載せ、レオン様の執務室に向かった。


「ティナちゃん、待ってたよ~」


 ノックして入室するとノア様が話しかけてきた。執務机があるスペースの横にソファーやローテーブルが置かれたスペースがある。そちらにワゴンを押して行き、紅茶を淹れた。


「ティナは紅茶を淹れるのも上手いんだな。美味しいよ」


 レオン様の言葉に嬉しくなる。だから嬉しくなっちゃダメなんだって!しっかりしろ自分!


「ティナちゃん、今日は俺たちここでずっと書類仕事なんだ。午後もお茶淹れに来てくれない?」


「マルゴットメイド長に聞いてみませんと……」


「俺からマルゴットに言っておくよ」


 一応渋ってみたがレオン様の一言であっさり決まってしまった。


 マルゴットは不愉快そうな顔をしていたが、再度余計な口は利かないようにと釘を刺しただけだった。





 午後にお茶を淹れた時だった。

 レオン様とノア様はソファーで一休みしながら紅茶を飲んでいたが、何かの拍子にレオン様の机に載っていた書類が床に落ちた。

 

 私は何気なく書類を拾い、


「あら?ここの計算間違ってますよ」


 二人が驚いたような顔をしたので慌てて謝る。


「すみません!大事な書類を勝手に見てしまって」


「いや……ティナ、君、この書類の計算できるの?」


「え?はい」特に難しくないよね?


「ちょっとこっちの書類を見てくれるか?」


「ここの計算とここの計算、こっちに結果を書き込んで……わかる?」


「はい、わかります」


「じゃ、やってみて」


———十数分後


「できました」


「え?もう?」


 書類をチェックしたレオン様はノア様に頷いた。

 ノア様は部屋を出ていき数分後、戻ってくると同時に机と椅子がワンセット運び入れられた。


「ティナ、君の職場は今日からここになったから」


「え?でもマルゴットメイド長に許可を取らないと……」


「俺がもう伝えたから大丈夫だよ」


 ノア様素早い!え?ここが職場?いつ配置換えに?


「あの、私はここの掃除をすればよろしいですか?」


「いや、君は俺たちの助手だ」


 どうしてこうなった?




 


 新しく運び入れられた机でレオン様たちの書類仕事を夕方まで手伝い、執務室を引き上げた。

 

 廊下を歩いているとケイトに捕まった。


「ティナ!レオン様の執務室に配置換えになったんでしょ。凄いじゃない!何をしたの?」


「書類仕事を手伝っているだけよ」


「えーーー!書類仕事って……ティナわかるの?」


「え?もちろん……って、あ!」


 侍女ならともかく一般のメイドが書類を読めたり複雑な計算ができるわけなかった。


「あああの、ちょっと習ったことがあって……簡単な事しかできないんだけど……」


「そうなんだぁ、いいなあ」


「どうして?」


「だって、レオン様って素敵じゃない!お顔も整ってるし背も高くって、それに優しそうだわ。そりゃあ私たちとは身分も違うし口なんか利けないけど、見るだけでも目の保養よね」


「私は側近のノアルーク様がタイプです」


 おわっ!コニー居たんだ!いつの間に?


「ねえねえ、レオン様とお話しした?」


「少しだけよ。お仕事に必要な事を———」


「あなたたち廊下で何をお喋りしているのです!仕事が終わったら速やかに戻りなさい」


 マルゴットに睨まれた。


 私たちは「「「はい」」」と返事をして部屋に引き上げた。


 ケイトはマルゴットの後ろ姿にアカンベーをしてたけど。






 次の日は朝からレオン様の執務室で書類仕事だった。


 私は街に買い物に行きたかった。ここでメイド生活をしていれば大概のものはそろうが、それでも足りないものはある。(下着とか)そういう日用品を買いに行きたかったのだ。数時間抜けさせてくださいと頼もうと思ったのだ。


「ああ、じゃあ俺たちの馬車に一緒に乗って行けばいいよ」


「そうだな。ちょうど街の役所に用事があるんだ。ティナの用事は時間がかかるのか?」


「いえ、そんなには。でも……一緒の馬車なんて恐れ多いです。私は歩いていきますから」


 ノア様の提案にレオン様も同意してなんか馬車に同乗させてもらう雰囲気だ。

 なんかいいひと過ぎない?


「気にしなくていいよ。俺たちは役場で打ち合わせがあるからティナは用事が終わったら役場に来てくれればいい」


「そうだよ。女の子を歩かせるなんて。ちょうど目的地が同じなんだから」


 押し切られて馬車に同乗させてもらうことになった。

 ケイトが聞いたら羨ましがられるんだろうな~と思いながら街に向かった。





 



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