表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/19

また閉じ込められた?


 王都にいる貴族のほとんどが参加する社交シーズンの終わりを告げる王家主催の大夜会。


 王城の一番大きなホールはいつにも増して飾り立てられ、今シーズンの社交の終わりを惜しむ貴族たちで溢れていた。

 この夜会が終わるとともに領地に戻る貴族は多い。領地に戻らずずっと王都で生活している貴族も多数いるが。アルフォード侯爵のように王城で仕事をしている者や、下級貴族では領地を持たない者もいる。

 王都にいる者の社交はずっと続いていくわけだが、それでもこの大夜会が一つの区切りになる。


 

 


 そのカップルの登場に周囲は騒めいた。


 男性の方はダークブラウンの少々短めの髪に優しげなペパーミントグリーンの瞳、背が高く均整の取れた体格に整った顔立ち。

 彼がエスコートする女性は彼の瞳のようなペパーミントグリーンの愛らしいドレスを身にまとい、緩くウエーヴした金色の髪、碧色の眼を持つとても美しい令嬢だった。


 二人は人々の注目を集めたが、この麗しい二人が誰なのかがわからなかった。


 やがて男性の方はゴットフラム大公の嫡男レオン様だ、という声が流れ始めた。

 二年前まで王都にいたレオンの顔を見知っている者も多かったし、傍に付き添うノアルークの存在もそれを裏付けた。


 しかしレオンがエスコートする見目麗しい令嬢のことは誰一人知らなかった。

 あれほどの美人なら今までも噂になっていてもおかしくないというのに。



 それに……忘れもしない今シーズン初めの王家主催の大夜会。そこで繰り広げられたネイサム第二王子の婚約破棄とゴットフラム大公とのやり取り。


 ゴットフラム大公の息子であるレオンの隣にはあのもっさりしたアルフォード侯爵令嬢がいなくてはならないのだ。


 それなのにレオンは見目麗しい謎の令嬢をエスコートし、仲良さげに談笑している。


 スキャンダルの臭いがするこのカップルに人々は注目した。





 ファンファーレの音と共に王族が入場する。

 国王、王妃に次いで第一王子ローレンス、第二王子ネイサム。

 

 ネイサムはこの大夜会でようやく謹慎を解かれた。

 二度ほどルルーチェ男爵令嬢を離宮に招き入れようとしたことがばれたが、王妃がもみ消した。発覚していれば今日の復帰は無かっただろう。


 ローレンスの妃シンディは身重のため欠席である。


 王族が壇上に設けられた席に着くと国王の後ろに宰相のアルフォード侯爵が、ローレンスの後ろに側近のダイラス・アルフォードが、ネイサムの後ろにも彼の側近がそれぞれ立った。


 国王の合図とともに夜会が始まった。

 王族の前に挨拶の列ができる。

 概ねは高位貴族からになるがそこまで厳格に順番が決まっているわけではない。


 レオン様が私に訊ねた。


「今日は父上が不在だから俺が挨拶に行かなきゃならないけど、ティナはどうする?」


 わざわざ聞いてくれたのはネイサム王子が居たためだ。あまり顔を合わせたい相手ではない。


「私は後でお父様と伺います。レオン様、お一人でいいですか?」


「俺もネイサム王子と君を会わせたくない。一人で行ってくるよ。ノア、ティナのことを頼む」


「了解~。男どもは寄せ付けないから安心して行っておいで」





 王妃は会場に入ってすぐにそのカップルに気づいた。それほど二人は目立っていたのだ。

 そして驚いた。ゴットフラム大公の息子レオンは見たこともない令嬢をエスコートしていたのだ。


 席に座ると後ろに控えた侍女の中からマルゴットをこっそり手招きした。

 扇で口元を隠しながらあの娘を知っているかと尋ねると「王妃様!あれがティナという平民の娘です。なんて厚かましい!」と答えた。


 驚いた呆れ者だ!王家の夜会に平民を連れてくるなど!クリスティナはどうしたのだろう?こっそり国王の後ろに立つアルフォード侯爵の表情を窺ったが彼は無表情に立っており内心はわからなかった。


 これは面白くなってきた。

 自分の娘をないがしろにして平民の娘を伴ったレオンをアルフォード侯爵は苦々しく思っているだろう。

 やはりローレンスの相手役にはあのティナとかいう娘を使おう。わざわざ夜会に連れてくる執着ぶりだ。ローレンスとあの娘が浮気をしたらレオンは黙ってはいないだろう。

 第一王子の陣営はガタガタになるはずだ。

 王妃はこっそりほくそ笑んだ。


 レオンが挨拶にやってきた。

 当たり障りのない話を国王としている。王妃はあえて黙っていた。


 ふと国王が「クリスティナ嬢と一緒ではないのか?」と尋ねると

 レオンは「後でアルフォード侯爵と一緒にご挨拶に伺うそうです」と答えた。


 国王がアルフォード侯爵を振り返るとアルフォード侯爵も「はい、後で娘を連れてまいります」と言っていた。

 クリスティナはまだ来ていないのだろうか?平民風情をエスコートしているレオンと顔を会わせたくないのかもしれない。




 国王と王妃がファーストダンスを踊り、場がくだけてきた。

 王妃はローレンスに睡眠薬を盛る機会を窺っていた。






 ネイサムは欠伸をかみ殺した。退屈だ。父上と母上がいなければ令嬢たちと踊ったり戯れたりできるのだが、さすがに謹慎明けでは自重しなければならない。その程度の分別は持ち合わせていた。

 だが、もう少しこの退屈な時を過ごせば……実はネイサムは休憩室の一室にルルーチェ男爵令嬢を呼び出していた。

 彼はこの場を抜け出す機会を窺っていた。





 しばらくしてダイラスがローレンスに何か耳打ちして彼の傍を離れた。


 チャンスが巡ってきた。王妃はローレンスの侍従に目配せする。

 ローレンスの注意を引くように話しかける。侍従は上手くローレンスの飲み物に睡眠薬を落とし込んだ。




 少し経つとローレンスの眼が虚ろになってきた。必死に頭を振って眠気を飛ばそうとしているようだ。

 侍従が「お疲れではないですか?休憩室で少しお休みになっては?」と話しかける。

 上手くローレンスを誘導していく。

 なぜかネイサムも「私も疲れたから休憩しよう」などと言って立ち上がった。









 


 王族への挨拶もひと段落しダンスが始まった。

 レオン様に手を差し出され私たちはダンスフロアに進み出る。

 レオン様のリードは巧みでダンスがこんなに楽しいのも初めてだった。


 レオン様は魔法使いだ。

 ゴットフラム領で一緒に乗馬をしたり、お祭りの準備に奔走するのも楽しかった。

 でも、今まで嫌で嫌でたまらなかった夜会で着飾ったりダンスをすることがこんなにも楽しい。



 私たちは一曲踊り終わると大勢の人達に囲まれた。


 私はレオン様を取り囲む令嬢たちに睨まれて追いやられてしまった。

 でも睨まれてもレオン様の婚約者は私なのだからしょうがないと思う。

 反撃する間もなく私も令息たちに囲まれる。ちょっとみんな現金過ぎないかしら?今まで私のことを馬鹿にして近寄っても来なかったくせに。

 まあ、私が陰気で芋臭く見えるように振る舞っていたからしょうがないんだけど。


 ダンスを誘う手が複数差し出され困っているともう一人、ノア様から手が差し出された。

 安心してノア様の手を取る。

 私たちがダンスに向かうと、レオン様も押し切られて一人の令嬢の手を取ってダンスフロアに出てきた。

 わかっているの、レオン様が素敵だっていうことは。ダンスは社交辞令だっていうことは。

 でもなんか面白くなかった。


 だから私はノア様とのダンスが終わるとほかの人達の誘いを断りテラスに向かった。

 レオン様とノア様は令嬢たちに囲まれ身動きできないようだった。




 テラスで頭を冷やそうと向かったが、テラスに出る前に誰かの侍女とぶつかった。

 彼女が持っていた飲み物が私のドレスにかかる。


 分厚い眼鏡をかけたその侍女は慌てて私に謝り、ドレスの染み抜きをするのでこちらへと私を誘導した。





 休憩室の一室に入るなり私は有無を言わさずドレスを脱がされた。

 侍女は私のドレスを抱え「急いで染み抜きしてまいります」と部屋を出ようとした。


 不審に感じ「ちょっと待って」と彼女の手を引いた途端、振り払われた勢いで彼女の眼鏡が飛んだ。


「マルゴットメイド長!」


 マルゴットは私を突き飛ばすと急いで部屋を出た。


 私は彼女を追いかけたが———鍵がかかっている。


 私はまたしても彼女に閉じ込められてしまったのだった。




 どうしてこうなった?




 お読みくださってありがとうございます。

 あと五話で完結予定です。

 最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

 評価やブクマしていただけると励みになります。

 よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ