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短めです。

よろしくお願いします。

「うぉぉおおぉぉーん、どうしてこうなったのぉ!?」

「それ私のセリフ……。調査なんて……武器とか持った事ないし無理」

「しかも交代はそれ相応の理由なくては不可って。うおぉぉおん」

「メグがいつも交代ばかりするからだよね?」

「ベスもでしょ!?」


 ギルマスから返ってきた書類には調査人員にはライリー、エリザベス、そして何故かアランの名前が上げられていた。


「しかもアランってー!?なんでぇ!?」

「ぼ、僕にもさっぱり……。何でだろう?」


 エリザベスはちらっとアランの頭の上を見る。『英雄』という文字がきらきらと光り輝いていた。アランは何故自分が選ばれたのか分からず動揺していた。エリザベスには誰かアランの秘めた才能を見抜く職員が、経験値を上げるため人員に組み込んだのではないかと考えた。


「まぁ、そこそこいい線いってるしな。俺ほどじゃあねぇが。調査だけだし気負わずに行こうぜ」

「アラン、嫌なら嫌でいいよ?私はアランはエリスとここで待っててほしいって思ってるから」

「あー、うん、えー……、ううん。ベスおばさんのことが心配だから一緒に行くよ」

「優しいね。ありがとう」


 アランはエリスのほうを一瞥し『行く』と答えた。柔らかい髪の毛を撫でながら微笑むとアランもニコッと可愛く微笑み返してくれた。エリザベスの心がホッとする瞬間だ。


「ええー、わたしは?ベシュおばさん、わたしおるしゅばんなの??」

「そうね……。あぶないからね?」

「わたしがいったのよー!わたしがいっしょのほうがいいのよ!」

「でもエリスは小さいからね?お留守番」

「むーーっ」


 可愛いほっぺを膨らませて駄々を捏ねる姿は可愛らしかったが、養い親としてエリザベスは幼いエリスには危険な事にはさせたくなかった。頭に『聖女』の文字が見えても、可愛い女の子には安全な場所に居て欲しかった。


「可愛いエリスには土産があれば持って帰ってくるぜ!」

「いらない」


 エリスはエリザベスのことを実母のように慕ってくれるが、ライリーのことは何故かつんけんし態度が冷たかった。ただライリーは全く気にせず、エリザベスも女子特有の『おとこきらーい』っていうやつだろうと思っていた。


「スタンピートかは確実じゃあねぇから大丈夫だろう。エリスの話だとこの湖の近くが怪しいからそこ見て帰る。報告書あげて後は上の判断だ。いいな!?」

「「はい」」

「ここからじゃあ……、んー頑張りゃ日帰りで行ける距離かぁ。今日準備して明日行くか」

「きょういったほうがいいよ」

「ん?」

「ぜったいきょういったほうがいい。あしたはおそいの」

「エリス、どうして?」

「はやいの。すごくはやい。ちょうさははやいほうがいい。ぜったい」


 ライリーが悩ましげに頭をかき、エリザベスを見る。エリザベスはアランに聞いた。


「アランはどう思う?」

「僕はエリスの言う通りにした方がいいと思う。こういうときのエリスの感は外れないから」

「ライリー、そういうことだから……」

「おう!じゃあすぐ行くか!準備できたら南門集合!」


 エリザベスは関心していた。


 ライリーはこれまでの自身のやり方を積み重ねて来た実力のある冒険者である。プライドもあるだろう。それなのに受付や裏方の仕事ばかりの自分の話を聞き、小さなアランやエリスのいうことに真摯に対応している。これがA級(ライリー)なのかとエリザベスは思った。


 実は分かりづらいがライリーは頭が柔らかく、柔軟な対応ができる。だからこそ皆から信頼されているし、突発的なパーティを組んでも皆をまとめながら、実力以上の力を発揮させる。彼と組んだ冒険者達はできればライリーを仲間にしたいし、もう一度彼と冒険に出たいと考えている。カリスマ性があるのか人誑しなのかわかりかねるが、エリザベスはだから勇者なのか、と納得した。これまでの私生活やアランとエリスに対してのやり方には、何度でも文句はいいたいが。


 エリザベスはライリーを少し見直したのだった。



***



 三人が準備をして南門を発ったころ。


「メグ、行くわよ」

「え?え?エリス……?」

「ぼさっとしないで!?追いかけるのよ」 


(くやしいくやしいくやしい!!ライリーのやつ!ベスと一緒なんて!アランもちょっとはこっちに加勢しなさいよ!!全く!)


 エリスはエリザベスには幼く愛らしい幼女を演じているが、その中身は性格の悪い狡猾な子どもであった。頭もきれて回転も早い。演じることに罪悪感もなく、非常に堂々としたものだった。アランだけはその中身を知って、時折嗜められるが、怒られない、ばれない、ぎりぎりのところで色々なことをやっていた。


 エリザベスは当然気づくことはなく、ライリーは何となく野性の勘で胡散臭く思っている節があった。


 エリスにとって兄であるアランは、自分の片割れのようなもので、良くも悪くも居なくなるのは非常に困る存在だった。そしてエリザベスは、地獄のような日々の中で差した太陽の光だった。汚らしい子供(ガキ)ではなく、愛らしい幼子として扱ってくれて優しくて時々怖い、母親のような存在だと感じていた。ライリーはというと、エリザベスにとっては非常に邪魔な存在だった。機会があれば社会的にも物理的にもなんとかしたかったが、相手が何枚も上手なのか何も考えていないのか、幼いエリスが繰り出す嫌がらせはこくごとく失敗に終わっていた。そしてエリスは恐れていた。エリザベスがやがてライリーに恋して、愛してしまうことを。


 最初こそライリーを邪魔者のように見ていたエリザベス、そして二人の子どもに慕われるエリザベスに嫉妬するライリーという図式があり、エリスは安心していた。それが最近はどうだ。ライリーは態度を軟化させ、むしろエリザベスをかいがいしく世話をしたがることがある。エリザベスは今現在何も感じてなさそうだが、大人の女性だ。いつどうなるかわからない。というより、何となくエリザベスも態度が以前より柔らかくなっているように感じていた。エリスとしては、エリザベスがライリーに取られそうで恐ろしいのだ。エリザベスはエリスにとって初めてできた愛する他人だった。


「絶対、絶対に許さないわよ、ライリー。スタンピートなんて私の力で何とかなるのよ!待っていてね。エリザベス」

「ちょ、ちょっと!?エリス!?待ちなさい!ダメよ!ちょっと!」


 遅ればせながらエリスとメグの二人も三人の後を追いかけて街を出ていった。


読んでいただきありがとうございます。

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