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追放ルートを目指します!  作者: 天空ヒカル
第6部 レラン高原の戦い
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【着陣】

帯剣し、(よろい)を身に付けた完全武装のサアラは、右手に愛用の弓を持ち、グリーンヒル砦の見張り台から戦況を見つめている。


彼女の(よろい)については、流れ矢が飛んでくる事を心配したアルフレッドがサアラに着用を進言したものだ。


砦の中でも一番見晴らしの良い場所にある見張り台からは、現在の戦況が手に取るように分かる。


見張り台は砦の最重要施設であるため、十分な広さがあり、20人以上の兵士を収容しても()()余裕がある。


「爺、敵の数はどれ位だと思う?」


「そうですなぁ・・・およそ2,000といったところかと。」


肝心の戦況は一進一退を繰り返しており、双方とも決め手を欠く状況である。


「姫様、あれをご覧あれ。」


アルフレッドが指差した先には、膠着(こうちゃく)した戦況を打開すべく、砦から最前線に向かう軍勢が見て取れる。

軍勢の先頭ではためく軍旗は「草冠に女神」だった。


「マクミラン卿ね。どうかご武運を・・・」


砦の外に出る事が出来ないサアラは、味方の勝利とアーサーを始めとした騎士たちの無事を心から祈念する。


アーサー率いるアムロード家の出撃を見送ったサアラは、もう一つの懸念(けねん)を口にする。


「ところでウィルド殿下はどちらにおられるのかしら?」


「ウィルド殿下なら真っ先に砦を出られたはずですが・・・あちらでございましょう。」


アルフレッドが指し示す方向に目を凝らしたサアラは、遥か彼方の前線に、ウィルド王太子と彼を守護する近衛騎士団の姿を捉えた。


『どういう事?』


すぐにサアラは、彼らの異変に気付く。

ウィルド王太子率いる近衛騎士団のみが、王国側の防衛線から不自然な程突出しているのだ。


この様子を見たサアラは、何とも言えない嫌な予感を覚える。


「まずいわね・・・あれでは敵の真っ只中にいるようなものだわ。先走り過ぎています。」


「左様ですな。恐らく戦う事に夢中で、自分たちが突出している事にすら気付いていないのでしょう。このままでは退路を(ふさ)がれて囲まれる恐れがございます。」


その恐れは直ぐに現実のものとなった。


突出したウィルド達の後ろに回り込んだ敵軍は、一気に近衛騎士団の切り離しにかかった。


ウィルド達の退路が見る間に(ふさ)がれていく。


公国軍は少し攻めては()()()後退を繰り返す事によって、ウィルドの部隊を誘い出す作戦を取った。


そして自分たちが優勢と思い込んだウィルド達は、本当は自分たちが誘い出されているとは夢にも思わず、まんまと包囲されてしまう。


『何て事なの!? このままでは殿下が危ない!』


王太子の危機を目前にしたサアラの胸が熱く高鳴り、普段は彼女の中に眠っている野生児の本能が目覚める。


「姫様!?」


顔面蒼白となったサアラを見てギョッとしたアルフレッドが声をかけるが、彼女は反応しない。


そしてスイッチが入ったサアラは誰もが驚くような決断を下した。


「爺! 我らは()()()()ウィルド殿下の救援に向かう!」

次回「出撃」は、10月20日(金)20時頃に公開予定です。

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