【面会Ⅱ】
「アラン、忙しいところ済まないな。」
「いえ、私の方も殿下にお話があったので、かえって好都合でした。」
「話とは何だろうか?」
「私の話は後で結構です。まずは殿下のご用件をお聞かせください。」
「そうか・・・間もなくレラン高原で戦いが始まると聞いているが、これは本当か?」
「事実です。あと10日足らずで戦が始まるでしょう。」
「その戦、私も参加したい。だが私の出陣を父は許して下さるだろうか?・・・どうした、具合でも悪いのか?」
アランの目が点になって固まっている事に気付いたウィルドは、心配そうに声をかける。
「・・・あっ、いや、申し訳ございません。実は私の要件というのもその事なのです。」
「それは奇遇だな。話を聞こう。」
アランはアムロード家がレラン高原出兵の条件として、ウィルド王太子の出陣を求めている事を手短に説明した。
話を聞き終えたウィルドは、複雑な表情で感想を述べる。
「・・・そうか、それは私にとって『渡りに船』という事になるのだろうな。」
「ええ、ですから殿下のお考えを伺った時には驚いてしまいました。」
「しかしそういう事情であれば、私の出陣は父上に認めて頂けるのではないか?」
ウィルド王太子の楽観的な予想に対して、アランは残念そうに首を振る。
「・・・いえ、国王陛下が殿下のご出陣を簡単に認められる可能性は低いと思います。」
「何故だ? 普通に考えればそれが最善の方法だと思うが?」
「殿下のご出陣を国王陛下が求めたのではなく、アムロード家が求めたところが問題です。それですとアムロード家の要求に国王が屈したと周りに受け取られる恐れがありますから。」
「しかし戦争が近付いている今、そのような些事にこだわってる場合ではないだろう。つまらない面子より目前の敵に備える方が優先すると思うが。」
立場上「あなたの言われる通りです。」とは言えないアランは、返答する代わりにウィルドに協力を依頼する。
「ウィルド殿下、これから国王陛下に殿下のご出陣について相談申し上げるつもりでした。是非ともそこにウィルド殿下もご同席頂き、私と共に陛下の説得をお願いしたいのです。」
「分かった。王国のために骨を折るのは厭わない。」
「ご助力、感謝申し上げます」
『この方が国王になった時が楽しみだな。早くそうなって欲しいものだ。』
王国の将来に言い知れぬ不安を感じていたアランにとって、次期国王であるウィルドの存在は希望の光であった。
次回「説得」は、10月18日(月)20時頃に公開予定です。




