【面会Ⅰ】
エドルとの密談が終わった後も、アランは王宮で戦争の準備に忙殺されていた。
アムロード家からの使者が王宮に来たのは翌日の早朝の事だ。
一週間前から王宮に泊まり込んで帰宅していないアランは、自ら使者に応対する。
使者が持参した書状には、アムロード家が出兵を承諾した事と、出兵の前提となる条件が記されていた。
そしてアムロード家が示した二つの条件は、いずれも王家にとって受け入れがたい内容ではなかった。
アムロード家の方針が出兵で固まった事を確認したアランだったが、心配事は残っていた。
「さて残る問題は国王陛下の説得だが・・・」
国王は自分たちが譲歩したのだから、アムロード家は無条件で出兵すべきと考えているはずだ。
そのためアムロード家が条件を示した事に腹を立てるに違いなかった。
だが戦争は待ったなしで迫っているのだ。
アランは余計な駆け引きで時間を浪費したくなかった。
『まずはウィルド殿下と話をつけるのが先か。』
相手がウィルドであれば、真摯に説明する事で同意を得られる公算が高い。
アランがウィルド王太子との面会を設定しようとした時、次席秘書官のジョセフがタイミング良く彼の許にやって来た。
「丁度良かった。緊急の要件があって今日にもウィルド殿下にお会いしたいのだが、殿下のご都合を聞いてきてくれるか?」
その依頼に対するジョセフの返答は意外なものだった。
「あの、それが・・・ウィルド殿下がアラン様との面会を求めてたった今来られています。」
「何だって!?」
次回「面会Ⅱ」は、10月17日(火)20時頃に公開予定です。




