【初めての失態】
その後もサアラは新米悪役令嬢として、ゲームで体験したイベントをこの世界でも次々とこなしていった。
ゲーム内でのサアラの決まり文句である「あなたのような成り上がりの雑魚が、殿下のお近づきになろうだなんて身の程をわきまえなさい!」というセリフも、最初は緊張のあまり声が上ずっていたが、だんだん慣れるうちに自然とセリフが出てくるようになる。
サアラは悪役令嬢として、少しずつ自信を深めていった。
そんな事もあって、彼女は少し調子に乗っていたのだろう。
その日も無事にヒロインへの意地悪を終えようとしたサアラは、普段なら避けるような冒険を犯してしまう。
『よし、最後にここで高笑いを決めてみせる。』
彼女は怪鳥騒動で練習を中断していた高笑いに、ぶっつけ本番で挑んだ。
「オーッホッホッホ・・・ゲホッ、ゲホッ」
「大丈夫ですか、ミス・アムロード」
高笑いに失敗し、盛大にせき込んだサアラは、ヒロインに本気で心配されるという失態を演じてしまう。
『うぅ、調子に乗り過ぎたわ。それにしてもこんな意地悪ばかりする私の事を心配してくれるなんて、さすがヒロイン。本当にいい子よねぇ・・・』
サアラは思わずほっこりしてしまうが、それを態度に表すわけにはいかない。
「ご心配には及ばないわ。それでは失礼。」
調子に乗って冒険した事を反省したサアラは、早々にイベントを切り上げて退散する。
そんな未熟な悪役令嬢である彼女に、次なる重大イベントが迫ろうとしていた。