【大夜会Ⅲ】
サアラとソフィアが会場に戻った時、ウィルドは外国の賓客と歓談中だった。
ソフィアに気付いたウィルドは、彼女を手で招き寄せる。
「丁度良いところに来た、紹介しよう。こちらはデール公国で宰相を務めるビショップ・フォード伯爵だ。」
「初めましてフォード卿、本日はようこそおいで下さいました。」
「こちらこそお会いできて光栄です、ソフィア妃殿下・・・ところでお隣の女性はどなたですかな?」
「これは失礼しました。彼女は我が国の重鎮であるアムロード侯爵家の者です。」
「初めまして、私はサアラ・アムロードと申します。どうかお見知りおきを。」
その名を聞いたビショップの目の奥がキラリと光る。
「ほう・・・あなた様がそうでしたか。」
「?」
「いや失礼、実は以前よりあなた様とお話しできないかと思っていたのです。だから今日は望みが叶いました。」
「フォード卿は私の事をご存じなのですか?」
「ええ、もちろん。あなたの名声は、今や我が国にまで届いていますよ。」
「私、名声を得るような事をした覚えはございませんが・・・」
「ハハハ、あなた様から見ればそうなるかもしれませんな。しかし世間の見方はまた違うものです。」
「そのようなものでしょうか?」
「ミス・アムロード、もし機会があれば一度我が国に来られませんか? 国賓として歓迎しますよ。」
「ご招待ありがとうございます。もしそのような機会があれば、よろしくお願い致します。」
サアラはビショップの態度に違和感を覚えていた。
デール公国への招待についても、単なる社交辞令を超えた「本気さ」を感じてしまうのだ。
そもそも王太子夫妻が目の前にいるにもかかわらず、ビショップがサアラとばかり話をするというのは、若干礼節に反している。
そのためサアラは、ビショップとの会話を強引に切り上げる。
「フォード卿、ウィルド殿下との歓談を邪魔してしまい申し訳ありませんでした。またお会い出来るのを楽しみにしていますわ。」
「ええ、是非とも。」
これがサアラとデール公国の中枢メンバーとのファーストコンタクトになった。
後にサアラはビショップを始めとしたデール公国指導部と深く関わっていく事になる。
次回「祝賀パレードⅠ」は、10月6日(金)20時頃に公開予定です。




