【大夜会Ⅰ】
宣誓式と同じ日に行われるもう一つの大きな行事は、王宮で開かれる結婚祝賀の大夜会だ。
これが一般的には披露宴にあたる行事になる。
王宮で開かれる夜会の場合、大規模になる事は珍しくないが、それでも今回の規模は桁違いだ。
何しろ出席者だけでも1,000名を超えており、給仕をする側の人間を含めれば会場として使用される鏡の間が狭く感じられる程である。
サアラも宣誓式で着用したベーシックな正装から華やかな夜会服に着替え、夜会に参加している。
サアラはウィルド王太子夫妻に挨拶をしようとしたが、混雑した会場の中で、中々彼らを見つける事が出来ない。
結局、会場内を5分以上もウロウロした末、ようやく彼女はウィルド王太子を発見した。
ウィルドの隣にはローズレッドを基調とした夜会服を身にまとった淑女が寄り添っている。
『あれは誰かしら? それにしても凄い美人ね。』
会場内でも一際目立つその女性は、サアラの視線に気が付くとパッと目を輝かせ、スタスタとサアラに近付いて来る。
『向こうは私の事を知っているようだけど、どこかでお会いしたかしら? 困ったわ・・・名前どころか顔すら思い出せないとは。』
危機的な状況に焦りまくるサアラに対し、目前まで近付いた謎の淑女は、満面の笑顔で声をかけてきた。
「サアラ様、やっとお会い出来ました!」
その声を聞いたサアラは、ようやく相手の正体に気が付く。
「あなた、ソフィアさんなの!?」
次回「大夜会Ⅱ」は、10月4日(水)20時頃に公開予定です。




