【ソフィアの旅立ちⅡ】
『どうしてサアラ様がこんな所に?』
事実を確かめるべく、ソフィアは急いで御者に命じた。
「馬車を止めて!」
停止した馬車から外に出た彼女は、淑女の許に駆け寄る。
やはりそれは見間違いではなかった。
「おはよう、ソフィアさん。」
馬上のサアラは何事もなかった様に挨拶する。
「サアラ様、こんな朝早くにどうされたのですか!?」
「何故だか分からないけど朝早く起きてしまったものだから、外をぶらぶら散歩しながらここまで来たのよ。少し馬を休憩させていたのだけど、あなたにお会いするなんて偶然ね。」
『これが偶然なんかであるものですか!?』
その嘘が見抜けない程、ソフィアは鈍感ではない。
サアラは自分の事をわざわざ見送りに来てくれたのだ。
ソフィアは自分が今日入城する事はサアラに伝えていたが、時間までは知らせていなかった。
会える保証もない自分のために、彼女は一体いつから待っていたのだろうか?
もし自分が見送りのサアラに気が付かなかったとしても、彼女は全く気にかけなかったに違いない。
全てを理解したソフィアの目から自然と涙があふれ出る。
「サアラ様、本当にありがとうございます。あなたにお会いできたおかげで勇気が湧いてまいりました。」
大粒の涙を流すソフィアを前に、サアラは明らかにおろおろした様子で返答する。
「ええっと、急にどうしたの?・・・それよりもお城に着くのが遅れては大変だわ、お急ぎになった方が良くてよ。」
「はい、行って参ります。」
涙をぬぐったソフィアは笑顔になり、サアラに別れを告げる。
「サアラ様、結婚式でお会いしましょう。」
「ごきげんよう、ソフィアさん。」
サアラが笑顔で手を振る中、馬車は再び出発した。
車内のソフィアはすっかり落ち着きを取り戻していた。
『王家に嫁いだからって別に取って食われるわけではないわ。それに信頼できる人たちだっている。きっと大丈夫よ。』
決意を新たにしたソフィアを乗せた馬車は王城を目指して走り去った。




