【落馬と引越しⅡ】
「ミス・モントレイ、私の声が聞こえる?」
「・・・サアラ様。」
落馬のショックで気を失ったニーナは、サアラの呼びかけに応える様に意識を取り戻す。
「ここは・・・?」
「校内の救護室よ、あなたは落馬して気を失ったの。」
「そうなのですね。馬に鞭を入れたところまでは記憶があるのですが・・・」
ニーナが普通に会話できる事を確認したサアラは、隣にいた指導教官に話しかける。
「教官、ミス・モントレイは私が付き添って彼女の家までお送りしますわ。」
「そういえばミス・アムロードとミス・モントレイは親しい間柄だったな。そうであれば是非お願いしたい。」
「分かりました。では私どもはこのまま・・・」
「お待ちください! それには及びません。私、一人で帰れますので!」
叫ぶように話に割り込んだニーナはベッドからそそくさと起き上がり、帰り支度を始めようとする。
「お待ちなさい! まだ動いては駄目よ。」
サアラの制止を振り切って起き上がった彼女の右足が床についた瞬間、ニーナは悲鳴を上げた。
サアラは努めて冷静な口調でニーナに告げる。
「捻挫よ。」
「捻挫!?」
「ミス・モントレイ、落馬を甘く見てはいけないわ。打ち所が悪ければ死んでしまう事だってあるのよ。あれだけ派手に落馬したのにその程度で済んだのだから、あなたは運が良いとさえ言えるわね。」
「申し訳ございません。私、取り乱してしまって・・・」
「いいのよ、気にしていないわ。でももし本当に悪いと思うなら、今日は大人しく私の言う通りにする事。いいわね。」
「・・・はい。」
「ではまず横になりなさい。足首が腫れる前に応急処置をしてしまいましょう。」
どうにかニーナを納得させたサアラは、教官の助けを借りて応急処置を施すと、彼女をアムロード家の馬車に乗せた。
次回「落馬と引越しⅢ」は、9月5日(火)20時頃に公開予定です。
どうぞお楽しみに。




