【父と娘】
「ニーナ、ミス・アムロードとは接触できたのだな?」
「はい。恩赦の披露式の後にお話しする事が叶いました、お父様。」
「どのようなお方であった?」
「お話しできたのは短時間でしたので、第一印象と言う事になりますが、それほど傲慢な方には見えませんでした。」
「それは何よりだ。」
「ただやはり私の事は少し警戒されているご様子でした。それでも別れ際に友人としてなら付き合っても良いとのお言葉を頂けました。」
「そうか!良くやった。初回としては十分すぎるほどの成果だ。」
「ありがとうございます。」
「だがこれはきっかけに過ぎない事を肝に銘じよ。何としてもミス・アムロードとお近づきになるのだ!」
「ご無理をされないで下さいませ。お体に障ります。」
ニーナはベッドから起き上がろうとする父親を急いで介助する。
介助を受けてようやく上体を起こした父親は、しばらく呼吸を整えてから話を再開する。
「・・・以前にも話した通り、今回の事はミス・アムロードの恩赦が目的だ。当家を始め、他の貴族家の恩赦はついでに過ぎない。そしてミス・アムロードの追放と恩赦が無ければ、我がモントレイ家がアムロード家に接近する事など到底かなわなかった。当家とってこれは千載一遇の機会なのだ。」
「重々承知しております。」
「良いか。事の正否はお前の将来だけでなく、ひいては当家の将来にも関わる重大事である事を決して忘れてはならない。」
「ご心配には及びません。必ずや成し遂げてご覧に入れます。」
「すまぬ・・・私がこんな体でなければ、お前に余計な苦労を掛ける事は無かった。」
「何を仰せですか。私は苦労した覚えなどございません。それよりももうお休み下さいませ。ご無理をされては治るものも治りませんよ。」
「ああ、そうだな。」
ニーナの介添えで再び横になった父親は、部屋を下がろうとする娘を呼び止める。
「頼んだぞ、ニーナ。」
娘は父の言葉に満面の笑みで応えた。
次回「没落貴族」は、2月25日(土)22時10分頃に公開予定です。
どうぞお楽しみに。




