【本当のサアラⅢ】
もはやサアラに抗すべき言葉は尽きていた。
「・・・なぜ、そう思われるの?」
彼女の返答は言外に肯定の意味を含んでいる。
「私、平民時代にミス・アムロードとお会いした事があるんですよ。」
「えっ!?・・・それはいつの話?」
「もう3年近く前の事ですから、ミス・アムロードが覚えておられないのも当然です。あなたが王都にあるヴェルナー商会の本店まで馬の下見に来られた事があるのです。私はたまたま店にいたのですが、その時のミス・アムロードは全く偉ぶる事も無く、平民の私に対しても分け隔てなく接して下さいました。それを覚えていたので、ミス・アムロードは私が平民だったからという理由で差別しているように見せているけれど、これはあなたの本心ではないと思っていたのです。」
「・・・・・・」
「もう反論されないのですね、ミス・アムロード。」
「・・・あなたって意地悪な方だわ。」
サアラが下した評価に対して一瞬目を丸くしたソフィアは、声を出して笑いながら反論する。
「ミス・アムロード、よりによってそれをあなたが言いますか?」
「それもそうね。」
ソフィアの突っ込みが本気でない事が分かっているサアラの方も笑顔になる。
二人の間には、つい先程までの緊張感が嘘だったかのように和やかな空気が満ちていた。
次回「ソフィアの本心」は、1月16日(月)22時10分頃に公開予定です。
どうぞお楽しみに。




