【呼び出す理由】
『復讐だろうか?』
それが招待状を受け取ったサアラの最初の感想である。
今までの事を考えれば、ソフィア・ランストンが自分をお茶会に招待する目的など、それ以外に思い付かない。
サアラとしては『先約がある』などの理由を付けて招待を断る事も当然出来るのだが、相手は今や未来の王太子妃が約束された人物である。
貴族社会の常識としては、先約を断ってでも最優先で受けるべき招待となる。
『まさかお茶会にたくさんの有力貴族を集めてから、衆目の前で私に詫びを入れさせるとか・・・いや、それは無いわね。そんな事をしたら今度はソフィアさんが悪役令嬢になってしまうわ。』
それほど長い付き合いとは言えないが、サアラはソフィア・ランストンが復讐に喜びを見出すタイプとはとても思えなかった。
ゲームと同じく現実の彼女もヒロインとしてあるべき振る舞いをしていたし、それらを全て強制力のせいにするのは明らかに無理がある。
ではソフィアが自分を呼び出す理由は何なのか?
彼女には皆目見当がつかなかった。
『さて、どうしたものか・・・』
言うまでもなくサアラは三侯の一角を占めるアムロード家の一員であり、自身の追放が解かれた事で、今後は王都で暮らす事が決定的だ。
サアラ自身がランドンに引きこもっているのであればともかく、現在の二人の立ち位置を考えれば、彼女が永遠にソフィア・ランストンから逃げ回る事は不可能に近い。
特にソフィアが自分との面会を求めているのであればなおさらだ。
ここまで考えたサアラは、もはや選択肢が残されていない事を自覚する。
『仕方がないわね。』
小さく溜息をついた彼女は机の引き出しからレターセットを取り出し、参加を受諾する返事を書き始めた。
次回「ランストン家へ」は、1月7日(土)午前0時10分頃に公開予定です。
どうぞお楽しみに。




